恐れ多いことです。身の程をわきまへぬ所業ではありませぬか。 ひたすら恐縮してをります。 わたくしこそ、拙著を高く評価して頂き、まこと嬉しきことでございました。

勿体ないことです。

高校生の野球大会長野県予選で、私の母校の長野県屋代高校（県立だが「立」は名称に附かない）が六十六年ぶりに準々決勝に進出することになつた。もちろんノーシード校である。今年の長野県予選準々決勝進出の八校のうち、四校が公立だといふ。野球部関係者は怒るかもしれないが、屋代の野球部はずつと弱小チームのままと思つてゐた。遙か東京から健闘を祈りたい。

ロミ『乳房の神話学』（KADOKAWA／ソフィア文庫、1916）がこの六月で９刷りになつた。文庫化を提案してくださつたKADOKAWAの麻田江里子さんに感謝の念を捧げたい。

一週間前には家人と上野の東京都美術館のミロ展へ足を運んだが、昨日は家人は他用があつたので「一人遠足」（友人の言）で横浜関内ホールに、小山実稚恵さんのベートーヴェン後期ピアノソナタ三曲の演奏会に行つて来た。小山さんの演奏は力強く、潑溂として素晴らしかつた。CDを買ひ、サイン会にも並び言葉をかはした。一時期ついてゐた杖を使はなくなつて久しい。

訂正です。 ・　「独学で学び」　→　「独学で習得し」　 とはいえ、指導していただかなかかったわけではありません。とりわけ作家の倉橋由美子先生には、端正な文章とは何か、物を書くとはどういうことか、ということを教えていただきました。そしてさまざまな英語の表現について助言をくださった翻訳家の中村保男先生、二十年前からは仏文学者でプルーストの個人訳をなさっている高遠弘美先生に表現にまつわる多くのことを教えていただきました。 決して独りではありませんでした。

次兄が日本数学教育学会の名誉会員になつた。1919年創設の歴史ある学会である。苦労が報はれた思ひでゐるだらう。弟として、とともに分野は違へど同じ学者の端くれとして心からの祝意を捧げたい。

先日の朝、前の晩までは繋がつてゐたWi-Fiが突然繋がらなくなつた。プロバイダーに連絡しようにもインターネットが繋がらず、「ひかり電話」も使へない。からうじてiPhoneの4Gときどき5Gになる回線を通じて連絡しようとしたのだが、これがうまく行かない。陸の孤島に置き去りにされた気分を味はつた。 途中経過は省いて結論から言ふと、紆余曲折ののち、プロバイダーと話すことが出来て、「同等の」レンタル用代替品を送つてもらひ、自分で設定しなほすことになつた。この同等の、といふのが曲者で、現今のプロバイダーに替へたのが2011年だつたからといふせゐか、2013年製造の機種が送られてきた。

三月に工学博士になつた、七月で七十八歳になる次兄からメール。七月にギリシアで開かれる数学のある分野の世界大会で二つ英語で発表するとのこと。我が兄ながら、その活力に脱帽するほかない。七十代で漢字検定一級を取得した長兄は九十四歳にしてなほ矍鑠としてゐる。愚弟賢兄を実感。

いと優しき言の葉に涙す。老境を慰むうるはしき花と優しきひとのお心遣ひの有り難きこと限りなし。

こちらこそコメントありがとうございます。私もちょっと思いがけない組み合わせと（よく知りもせずに…）感じましたが、ぜひ試してみたいと思います。

昨日午後八時前に撮つた安曇野の夜景。肉眼では真つ暗に見える中での街明かりだつたのだが、iPhoneで撮るとこんな感じになつた。

(高遠を通るたび、高遠弘美先生を思い出すのですが。)

高遠先生、リプライくださりありがとうございます。(びっくりいたしました……) そんな茶目っ気のある企画があったのですね。 もう高遠姓の方はいらっしゃらないのですか……。高遠姓はこの町由来なのかしらと考えていたので、そう伺うと少し淋しい気がします。(きっと周辺の街に出て行かれたのですね) 先日は高遠そばが食べられなかったので、また行った折にはトライしてみようと楽しみにしています。 春の高遠町は殊に美しいところでした。

鹿島茂先生からご近著恵贈に与つた。群馬県立館林美術館で４月２６日から６月２９日まで開催される「フランスのモダングラフィック展」の公式図録でもある。平凡社刊。まさに眼福としか言ひやうがない図版その他の資料に的確無比な先生の解説が附された貴重本である。読者は私がさうであるやうに、座右に置いてかの国がもつとも輝いてゐた時代の光輝あるいは残照をいとほしみ、懐かしむことだらう。フランスや西洋美術、ヨーロッパの藝術思潮に少しでも関心のある方には必携必読の一冊であり、必見の展覧会である。フランスでもこれだけの規模の展覧会はこの先も開かれないと思ふ。

先日のサントリーホールのコンサートで今さらながらオーボエの魅力にとりつかれ、とはいへオーボエは値が張るし難しいので、あれこれ悩んだ末にバロック式樹脂製アルトリコーダーを買つた。 以後毎日練習を重ねてゐるのだが、これが意外に愉しい。仕事に疲れると、否、疲れなくてもキーボードの前に置いたリコーダーを吹いてゐる。下手の極みゆゑ、同居する妻には迷惑かもしれないが。 第九の「喜びの歌」を朝一番の日課のやうに吹くことで一日が始まる。

来週火曜日（４月２２日）から、NHK文化センターさいたまアリーナ教室主宰の「プルースト精読講座四月期」がオンラインで始まります。９月までの六回で第二巻「花咲く乙女たちのかげに」を読み終へます。参加ご希望の方はお早めに。

過ぐる年の秋開催された菅野潤さんのコンサートが菅野さんと私の対談を含めてCDとして製作され、主催者の山田満さんからご恵贈頂きました。山田さんの熱意と心情に打たれてゐます。

昨日、高遠弘美先生＆豊崎由美さんの『失われた時を求めて』対談　allreviews.jp/news/7271　を視聴して、フォルカー・シュレンドルフ監督の映画「スワンの恋」を思い出しました。スワン役のジェレミー・アイアンズの哀れっぽさとか、シャルリュス役アラン・ドロンの俗っぽさとか……。あらすじとキャラ（登場人物）だけを抽出するとああなるのだと妙に納得してしまったのでした。ジェレミー・アイアンズ大好きな俳優さんなのですがね。

七十三歳になる。よくぞここまで息災に。 家人と祝ひてとつておきの葡萄酒を、最近気に入つてゐるレストランで開ける／空ける。葡萄酒は一杯づつソムリエとシェフにふるまふ。すこぶる美味なり。想像のなかでギリシアの海に思ひを馳せる。 よき一日なり。

数日で７３歳になる。近くのホテルの鉄板焼の店を予約した。我が家のcaveの銘醸ワインも少なくなつて来た。「勿体ない」ので次回に回さうといふ気もしたが、来年はもう飲めないかもしれないと考へなほし、昨日その店に当日飲むワインを持ち込んだ。結構な持ち込み料を払ふのだが、Château Lafite-Rothchild 2013であれば致し方ない。フレンチレストランも考へたが、最近はいささか重すぎるのでやむなし。どんな熟成を遂げてゐるか楽しみである。

【3月26日の豊﨑由美さんとの対談イベントに現地参加する方へのプレゼントその2】 当日参加して下さる四ッ谷龍さんが個人誌「むしめがね25　特集・編棒を火の色に替えてから」を参加者全員にプレゼントなさるとのことです。同号には冬野虹の俳句について綴つた拙文も掲載されてゐます。四ッ谷龍さんのご厚意に感謝いたします。

【三月二十六日現地参加の方にプレゼント】 けふ三月十五日発行の日本近代文学館館報最新324号に駄文を寄せました。「わたしの蔵書から——後を継ぐ子の絶えて無き身は」。近代文学館のご厚意で綺麗な複製版を作つて頂いたので、三月二十六日当日現地参加の方に差し上げます。由井さんもお書きです。

兄から。そのまま載せます。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 公聴会のビデオ（１時間ほど）が以下にアップされている． drive.google.com/file/d/1OI-G... 2006年のKeTpicから現在までが一通りまとまっている

7月で78歳を迎へる兄が二十年近く取り組んでゐる教育工学上のテーマが近年大きな実を結び、請はれて芝浦工大に博士論文を提出。数日前工学博士号授与の通知が来たといふ。 授与式ではガウンを着るらしいが、それよりも75歳を過ぎてなほ研究意欲が衰へず、博士論文に纏めた兄の意志と努力を弟として心から祝福したいと思ふ。分野は違へど私も完走せねばとの決意改めて。

3月26日の豊﨑由美さんとの対談イベントですが、7日の金曜日に「現地参加」分が完売しました。 あとは「Zoomによる同時視聴」「見逃し配信」が可能です。

3月26日の豊﨑由美さんとの対談イベントですが、7日の金曜日に「現地参加」分が完売しました。 あとは「Zoomによる同時視聴」「見逃し配信」が可能です。

【残席僅少になりました】 allreviews.jp/news/7271

「ふらんす堂通信」連載の「私のプルースト」十三回目の締切は３月２０日。二月中には脱稿してゐたのだが、何かが気になつて仕方ないので思ひ切つて抛棄。別テーマで一から新規に書き直した。四千二百字。それをさらに四回推敲し、やうやく完成稿に辿り着く。推敲はする方だが、一度完成した原稿を棄てるのはめづらしい。

昨夜は晴海の第一生命ホールで渡辺貞夫のコンサートを聞く。92歳とは思へない力強く艶やかな音色、自在なフレーズの連続に聞き惚れた二時間近い演奏だつた。バックのピアノトリオではドラムの伎倆が群を抜いて素晴らしかつた。いつもは最後に演奏するMy Dear Lifeはなし。

ご案内です。 いよいよ１０年目に入ります。有り難いことです。 www.nhk-cul.co.jp/programs/pro...

三月二十六日、神保町Passage Solidaで、豊崎由美さんと対談をします。ふるつてご参加下さい。 allreviews.jp/news/7271

先日から高遠先生の授業でご紹介いただいていた、歌人で俳人で詩人で素晴らしい散文家の冬野虹さん。 思いがけず、作品集を夫君の四ッ谷龍さまから拝受することになり、ここ数日間その世界に遊ぶという幸せな時間を過ごしました。（『編棒を火の色に替えてから——冬野虹詩文集』『ロバの耳——冬野虹画集』）

その素晴らしさは、わたくしなどの凡才では書き表せないので、心に響いた作品や言葉をいくつか抜き書きさせてください。 鏡の上のやさしくて春の出棺 荒海やなわとびの中がらんどう 小鼓型の硯に波の絵がありてその金の線ほそく唄へる 葉生姜のうすべに細く香りたち風鈴の中にはいってゆきぬ

詩文集には虹さんの散文も入っていてこれがまた素晴らしかったです。 「すこし落ち込んだ、平板な心持ちでいて、自分という我から、すらりと心が離れようとした瞬間に俳句ができてくるように思える。」 という執筆態度というものは翻訳にも通じるところがあるような気がしました。 四ッ谷さま、そして高遠先生、このたびは本当にありがとうございました。

ご助言有り難うございます。 この年になりますと、「短くも美しく燃え」のつもりで挑戦しても、「見苦しきは年寄りの冷や水」になるのでやめておきます。

今の家に越した2007年にBridgestoneのMariposaとLacrosseといふ二台の自転車を専門店で買ひ、最初の頃はそれでも夫婦で出掛けてゐたのだが、家の附近は急坂が多いといふこともあつて次第に乗らなくなつてゐた。駐輪代も無駄なのでけふ粗大ゴミに出した。￥900×2．私たちが自転車に乗ることはもうない。私のことにして、60年以上に亘る自転車歴に終止符を打つた日といふことになる。

ところで、私が愛聴してゐたのはストックホルムでの実況録音の海賊盤だつたのだが、今回AppleMusicで検索できたのは、Live Trane : The European Toursといふ七枚組で、「私の好きなもの」は6つの音源が入つてゐる。まだ聴き終はつてゐない。楽しみが増えた。

ベストいくつといふ発想は苦手である。好ましく思はれるのはさうした数字の枠外にも必ずあるからだ。その上で云ふのだが、エリック・ドルフィーが参加したコルトレーンのヨーロッパでのコンサート、とくにMy Favorite Thingsは海賊盤レコードで買つて以来半世紀以上に亘つて大切な演奏である。これを聴くと背筋が伸びる。精神が活力を取り戻す。また歩いていかうといふ気になる。私にとつて、藝術は、そして文学は、プルーストの云ふ真実の美を見いだすためにこそ存在する。さう信じる以上、プルーストの続きを完成させなくてはならない。コルトレーンはその歩みを支へる一人である。

読売文学賞が発表になつた。受賞した五人の方に心よりお祝ひを申し上げたい。 とくに斎藤真理子さんには格別の祝意を。 候補にこそなつたが受賞に至らなかつた私に、これ以上ないほど優しく温かい自筆のお便りを下さつた。まさに芳翰と言ふほかないお便りで、文箱を持つてゐれば大切にしまひたいお手紙だつた。

いま個人的なメールでも返信が遅れてゐます。実は少し前にクレジットカードの不正利用があり、未然に防ぐことができたので実害はなかつたものの、カードを替へたためにカード決済の登録を一からし直さなくてはならず、思つた以上に時間がかかつてゐます。お返事は追々そのうちに。不正利用の具体的な経緯にについても書きますね。

高遠先生にそんなことを言われたら、私は一行も書けなくなってしまいますー。

本日わたくしのもとにも届きました。ありがとうございます。アンソロジーの取捨選択、ああ、「捨てる」のではなく「省く」のだ。「省く」とは「省みる」なのだと思いました。

四ッ谷龍さんから拙文が掲載された個人誌「むしめがね」25が送られてきた。数ヶ所で私に言及して下さつてゐるが、人目につかない穴蔵めいた部屋で書いてゐるだけの私には過褒の言葉である。ただ文藝誌としては出色の出来だと思ふ。四ッ谷さんの気骨を感じ背筋が伸びる。端倪すべからざる方と言ふほかない。送料ともに千円。SNSで四ッ谷さんにメッセージを送れば買ふことができるはずである。

【近時感懐】 三月に七十三歳になる。早く逝つた両親の齢を遙かに超えた今、心に浮かぶのは「感謝」の思ひである。 ここ二週間ほど、老境の私の心は千々に乱れてゐた。さる大きな文学賞の最終候補の仲間入りをして、当選の場合にかかつて来る電話を待つやうに言はれたからである。落選の場合は来ない。この年にして初めて「受賞するかもしれない」といふ一縷の望みとともに半月近い日々を送るといふ経験をすることになつた。大小を別にすれば、世界的な文学賞の候補に挙がる小説家や選考委員に賞を下さいといふ懇願の手紙を書いた著名な作家の気持ちが初めて実感できたと言つてもいい。

今日発売の図書新聞で、荻野厚志さんが「楽しみと日々・壺中天書架記」について長文の素晴らしい書評を書いて下さいました。 荻野厚志さんに厚く御礼を申し上げます。

Xにも載せた2024年の本ベスト約10冊をこちらにも。 楽しみと日々　壺中天書架記/高遠弘美 決定版　世界の喜劇人/小林信彦 缶詰サーディンの謎/ステファン・テメルソン ビロードの耳あて　イーディス・ウォートン奇譚集 オクシアーナへの道/ロバート・バイロン 三行怪々/大濱普美子 19世紀ロシア奇譚集 断腸亭日乗（一）（ニ）/永井荷風 もうひとつの街/ミハル・アイヴァス

こちらこそ、今年もお世話になりました。ありがとうございます。 来年も素晴らしい年でありますように。

今年もあとわずかです。今年もたくさん本を買いましたが、いただいた本もたくさんあります。本当にありがとうございます。ひとつひとつお礼を申し上げておりません。非礼をどうぞお許しください。 買った本のなかでは神山重彦著『物語要素事典』（国書刊行会）がいちばん嬉しく、また感動しました。 いただいた本のなかでは、なんといっても高遠弘美著『楽しみと日々　壺中天書架記』（法政大学出版局）が素晴らしかった。 高遠先生とこの本をめぐるお話をALL REVIEWSでおこなったことも刺激的でした。名文とはなにかということを改めて教えられます。ものを考えて文章にすることのお手本のような本です。