大江健三郎『水死』 #読了
集大成的作品。内容とリンクした装丁がまた良い。父に関係する「水死小説」の執筆を断念したという内容が含まれる「水死小説」となっていて、もはや何でもありだな!と思いながら読み進めた。文体は「おかしな二人組」三部作の延長線上にあり読みやすいものになっている一方、内容は非常に多くの要素を含んでおり複雑。一つのテーマだけで小説が書けそうなものが複数投入されているような感じ。作中で出てくる言葉も「穴居人」「大眩暈」「死んだ犬を投げる」といった独特のもので面白い。相変わらずの自虐的描写もある。後期作品の中で読みごたえは傑出していた。結末はレイン・ツリーのイメージも重なった。
2 months ago