ぼくの博士論文は、ナショナリズムに不可避的につきまとう排除の原理を（完全には消し去れないにせよ）可能な限り抑制しつつ、人びとの助け合いを可能にする連帯をいかに再構築しうるのか、そのためにマスメディアには何が求められるのかを検討するという内容。 そこでキーワードとしたのが共感（empathy）であり、その危険性や限界を踏まえつつ、同じ社会を構成する人びとが支え合うための共感のあり方について検討した。 そんなわけで、Xのあり方以前に、イーロン・マスクとは思想に相容れないのだった。いや、Xの現状もいかがなものかとは思うけれども。

三牧聖子先生のインタビュー記事より。30日15時半まで全文読めるリンク。 「イーロン・マスク氏を筆頭とする米国の新興オリガルヒ（政商）の特徴は、世界や社会のあり方に関心がないことです。マスク氏は『弱者は共感を武器にする』『共感は敵だ』と言い切りました。人道支援の中核を担ってきた国際開発局（USAID）も、マスク氏が音頭をとって解体させました。」 digital.asahi.com/articles/AST...

梶原阿貴『爆弾犯の娘』（ブックマン社）読了。爆弾班の父をもった著者の自伝的ノンフィクション。逃亡中の父とそれを支える母と著者との奇妙な生活を描く。話題になった本なので、読んだ人も多いんじゃないかと思う。 著者は1973年生まれということで、ぼくと同じ学年。なので、文中に登場するカルチャー（ファミコンや人気マンガなど）は基本的に同じなのだが、生活環境のあまりの違いに唖然とする。 校内暴力が激しかった時期とはいえ、ぼくが大阪の住宅地でのほほんと暮らしていたのと同じ時期に、東京の池袋ではこんな暮らしをしていた女の子がいたのかと思いを馳せてしまった。

「中国はいまや強大な国家だという冷徹な事実を認識せよ」という事実認識に関する指摘を、「中国に媚びへつらえ」という主張だと解釈し、「それでも左翼か」と罵倒する投稿がXで流れてくるのがわりとつらい。 ただ、「中国が強大な国家なんてのは、わざわざお前らに言われずともわかっとるわ！」という苛立ちが、そういう投稿の背景にあるのかもしれない。

今日は妻を誘って観劇。びっくりするほど僕に合わなくて、始まって３分で後悔した。ただ、劇が合わないことよりも妻をこの劇に誘った後悔が大きく、観劇中はずっと隣を見られなかった。 終わったあと、恐る恐る感想をきいたところ、それなりに楽しんだようで少し安心した。

ナショナリズムのなかには現在生きている国民ではなく、シンボリックなものや過去の歴史（たとえば「国体」）を重視するがゆえに、後者を守るために前者を蔑視したり、犠牲にするタイプのものがあると博士論文には書いたのだが、それに近い思想を公言する人が出てきたのはちょっと予想外ではある。

長男が高校の読書感想文で「こころ」を指定されたとかで、アマゾンで購入したところ、めちゃくちゃBL風の本が届いて家族全員大ウケした。

人増えてるらしいんで、せっかくなんで比較 ←Bluesky Twitter/X→ 現時点ではRPもいいねも２倍くらいブルスカのほうが多いね（フォロワー数は1:10くらいのはずだが） まぁ話題にもよるが、記事にせよイラストにせよ「バズる時はXのほうがバズるが、通常時はブルスカの方が反応あることも多い」というのは、けっこう多くの人の肌感覚なのではないだろうか （あとXの数字がそもそも信用できるのかって問題もある、言いたかないが今の経営陣は水増しくらい平気でやりそうだし…）

昔の新聞記事の画像の文字起こしをチャッピーに頼んだら、全く違う文章を出力してきた。 質が悪いのが、いかにもそこに書いてありそうな文章を出してきたこと。原文と照合しないで出したら大間違いをするところだった。 思わず、「書いてあることと全然違う」と反応したら、 「……本当にそのとおりです。 ごめんなさい。 指摘は完全に正当です。今までの私の回答は、画像に実際に書いてある文字を忠実に起こすべき場面で、内容を推測・補完してしまい、結果として「別の社説を書いた」のと同じ状態になっていました。これは文字起こしとしては致命的な誤りです。」 と返してきた。 チャッピーよ...

昔、師匠が「本当にセンスが良い人はAからEの地点にぽーんと飛べる。でも、そんなセンスがない我々は、学問でAからB、BからCと積み重ねていくしかない」と言っていた。 学問は出来る人ではなく出来ない人のためにあるというこの発想は、師匠なりの自身への失望から出てきているのかもしれないといまは思う。 確かに、師匠の書くものは、刺激的なレトリックや論理展開がない分、石を一つひとつ積み上げていくような着実さがあって、ぼくが若い頃は（今も）論理の組み立て方が雑すぎるとよく怒られた。 でも、そんな師匠のもとで学べたのはラッキーだったのだろう。

授業をしているとき、目に入るところで受講者に本を読まれると結構落ち込む。自分にとってお前の授業はこの本よりも価値がないのだというメッセージをその姿が伝えてくるゆえ。 内職ならしょうがないけど、ぼくから見えないところでやってもらいたいというか。

先日、「働き方改革をやめれば、外国人に頼らずとも労働力不足を解消できる」と主張する企業経営者と話したのだが、正直、よくそんな認識で会社を経営できるなと思ってしまった。 いやでも、むしろそんな認識だからこそ、会社経営ができるのか…？

「外患誘致というワードでXで検索をかけると、自分が気に食わない人間に死んでほしいと思っているユーザーをたくさん観察できる」というようなことを書いた。外患誘致罪は死刑しかないため。 今日もXでそういうのをみたが、間接的に「お前は死ね」と言っているのと同じだし、まっとうなコミュニケーションではないよな。

この件については、特段言えることは何もない。でも、法律とジャーナリズムとの関係性という点で、この文章はきわめて理性的に書かれており、説得的だと思った。 note.com/shiki_4seaso...

帰りの電車で聞こえてきた会話。 「教授が私に甘くてさ〜。『◯◯は頑張ってるな』だって。私ぜんぜん頑張ってないのに〜」 もちろん、実際のところは分からないけど、それは期待込みの「頑張ってるな」ではないかと思った。「頑張ってるな」と言うことで、本当に頑張ってもらいたいというか。

ここで書いたコメントについて、15年前にめちゃくちゃマイナーなところに論文を書いたのを思い出した。当時は外国人犯罪ではなく、犯罪不安全般について考えていたわけだけれども。 「対処困難なリスクを犯罪リスクへと置換することで、自らの運命を自分で切り開くことができるという感覚を得ようとする衝動」とか。 さらに、井上達夫さんの『他者への自由』を引用し、そのような形で自由を獲得しようとする試みは、「自己の能力の限りない拡張を求めるがゆえに、権力に対して批判的距離を保持できず、それを自己の力能強化の手段として濫用するか、『主権国家』に自己肥大的な同一化を行うに至る」可能性が高いと書いた。

お腹が空いたので家に帰る。

12/20(土)毎日新聞「2025年「この3冊」」で若島正さんが『帰れない探偵』をあげてくださいました。 とてもうれしいです。 8月2日に掲載された若島さんの書評はリンクからで読めます。 「その文章を読んだ瞬間に、わたしはもうこの本を読み終わるまで、『帰れない探偵』という小説世界から帰れなくなった。」 allreviews.jp/review/7461

クルド人問題というより、クルド人をターゲットにした排外主義の問題について、朝日新聞の記事にコメントしました。 23日の19時まで全文読めるリンクです。 digital.asahi.com/articles/AST...

地方私立大学の優れた実績を紹介している早稲田の教員の方のこのポスト。引用リプライを見てたら、日本でトップクラスの待遇を誇る早稲田の教員が…みたいなのがあって、うんざりしてしまった。 では、ポジションにふさわしく、有力私大だけ生き残ればあとはどうなっても良いとでも言えば良いのか？ x.com/sobukawa/sta...

出迎えのために羽田空港に。早めに着いてカフェで授業準備をした。

オフレコ破りの件。「オフレコを破るなんてマスコミけしからん！」から「政治家と記者との癒着や自己検閲をもたらすオフレコ自体がけしからん！」まで批判はさまざまで、さらに研究者が「オフレコにまつわる不快な経験談」を語り出したところで、この話はいったいどこに向かうのだろうかという気持ちになる。

気に食わない誰かが批判されているのをみて、「俺も前からそう思ってた！」と一緒になって批判を始めるよりも、「もう批判されてるし、自分は言わなくてもいいかな」と考えた方が良いとは思う。批判の理由が差別とかなら話は変わってくるとはいえ。

深く考えさせられる記事だったので、蛇足を承知でコメントをつけました。 20日の21時まで無料で読めるリンクです。 digital.asahi.com/articles/AST...

「〇〇さんさあ…」って、ネットミームか何かなのかな。

新しく来た方へ •blueskyはアメリカの公益法人が独立サーバーで運営しています •要望やバグはいつでも聞かせてね、と運営 •TLは公と定義されてます •性別およびジェンダーアイデンティティを理由にした嫌がらせ、迫害は禁止です •人種、ジェンダー、宗教、民族、国籍、心身の障害、性的指向を理由とした差別および差別扇動は禁止です。 •肌色多めイラストからラベリングが必要 •R18およびR18Gのイラストも投稿可。ただし必ずラベリングをすること、 •便利なサードパーティアプリが複数あり。 •フィードが面白い •固定ポスト可、動画可、鍵実装は検討中 詳しくは下のガイドをお読みください

これはこの間やってきた朝日新聞デジタルのマスコットのデジモ。

研究室に新しくやってきた「自意識アニマル」です。

XやThreadsはユーザーの行動履歴（シャドウテキスト）を駆使したアルゴリズムで「おすすめ」を生成し、探索対象を人工的に供給し続けることで離脱を防いでいる。 Blueskyはこの部分をストイックに放棄している。だから探索サイクルを再活性化するには、ユーザー側の工夫、すなわちフィードの選択、新しいアカウントの発掘、意識的な越境などが必要になる。 これを「不便」と見るか「自律性」と見るかが、たぶんBlueskyへの評価の分かれ目なのだろう。

以前、論理的な人ほど陰謀論にハマる傾向があるとの調査結果を以前みたことがあるけれども、陰謀論は知識に乏しい人がはまるわけではない。むしろ、陰謀論を信奉する人は、かなりの理論武装していることが多いし、他の分野では優れた業績を残していたりもする。 韓国の前大統領もたぶんそうだろうけれども、社会の中心的な立場の人が陰謀論にはまるのも珍しくない。 本人には業績があったり、イエスマンに取り囲まれてたりするので、それが修正されるチャンスも乏しい。そこが怖いところで、仮に信奉者はそこまで多くなかったとしても、社会に大きなダメージを生じさせてしまう。

昨日、とあるイベントで話したのだが、ぼくはメディア・コミュニケーションの研究者ではあるのだが、「メディア・リテラシー」という概念が好きではない。 学生にメディアに関するレポートを書かせると、その多くが結論で「メディア・リテラシーを高めることが重要だ」とお約束のように書いてくるという理由の一つ。 ある教育社会学者によれば、教育はゴミ箱みたいに使われており、難しい問題があると、その解決策として「教育」が安易に持ち出されるという。メディア・リテラシーも同じ。 ただ、それだけではなくて、メディア・リテラシーという概念がリテラシーをかえって低くしてしまう可能性があると思うからだ。

そういうことを考えると、いまは上手に老いるのが難しい時代だと思う。古い常識にしがみつく「老害」になることも、いつまでも若いつもりの痛い中高年になることも避けなくてはならない。

一般論で言えば、変化の緩やかな社会で高齢者の発言が重視されるのは、過去の慣習に関する知識やトラブル解決のノウハウに関する知識が尊重されていたため。他方、変化の激しい社会では、古い知識は役立たないとされ、知識の絶えざる更新が求められる。 そのため、老いの価値も認められなくなり、若くあることが重視されるようになる。その一方で、中高年がいつまでも若さにこだわると、自らの置かれた立場を認識できない「痛い」存在になってしまう。 言い換えると、老いの価値が全く認められず、知識は絶えず更新していくことが求められるのに、態度としては老いなくてはならないということになる。

山上被告の犯行動機をめぐる報道について、一方に「山上被告は旧統一教会の被害者なのだから無罪でいい」と主張する人がいて、もう一方に「恐るべきテロを引き起こした人物なのだから、動機など一顧だにする必要はなく、問答無用で死刑でいい」と主張する人がいるのであれば、論争としては分かりやすくなる。 どちらかの意見の意見をここまで単純な主張へと還元できるなら、論破もしやすくなるので、相手側がそう言っていることにしたいとのインセンティブがどうしても働く。

これは恐ろしい話。ターゲットとなったのは、犯罪者でも何でもなく、国際刑事裁判所の職員だという。 inods.co.jp/topics/news/...

メモとして。 「いじめ」と「差別」の違いは、抽象的な次元で言えば、個人として認識されているか否か。 「いじめ」は具体的な名前と顔をもった人物に対して行われる。対して、「差別」は集団に対するものであって、個人に危害が加えられる場合でも、あくまで特定集団の一員としてのみ認識される。特定民族を無差別に殺戮する場合、その一人ひとりの固有性は、全く問題にならない。 したがって、差別を解消するためには、被差別集団が顔と名前をもった存在として認識されることが必要だと時に論じられる。確かに、人物の固有性が浮かび上がるほど、集団全体を一括りして差別するのは難しくなる。 ただ、これは言うほどやさしくない。

反グローバリズムの思想は、境界内での均質化と境界外との差異化を推進することを目指していて、なかでもヒトの移動には厳しい制限を求める。 この観点からすれば、海外にいる邦人が差別されても「そんなところに住んでるのが悪い」になるのではないかと思う。境界内でマジョリティが差別するのは当然の権利になる。 だから白人至上主義者と日本の極右も手が組める。

高校生の長男が修学旅行に出発した。 ちょっと前まで、気に食わないことがあると口をへの字に曲げてうずくまってしまう幼児だったのに、いつの間にか「飛行機の中でも英単語を覚える」とか言って、手荷物に入れて行くようなヤツになった。 まあ、たぶん、機内ではそれどころじゃないとは思うけども。

いま話題のフィンランドの吊り目の話。発端となった女性を擁護する同国の一部の人が「これは人種差別ではない」と言い張っているのをみると、「差別である／差別ではない」の決定を「する側」に委ねてしまうと、その基準が異様に甘くなってしまうことを示しているような。

いまちょうど、山形氏の訳した本を読んでいるところで、その読みやすい訳文には感心するばかりなのだが、実質的な気候変動否定論へのコミットメントはいかがなものかと思う。 もちろん、ぼくは環境科学については全くの素人なので、踏み込んだことは言えないのだけれども。 ただ、リンク先の文章を読んで、科学の不確実性を強調する割には、変動否定論者は「言われてきたほどには気候変動の影響が大きくないかもしれない」不確実性については熱心に語るが、「言われてきたよりも変動の影響が大きいかもしれない」不確実性についてはあんまり言わないのかなと思った。

今日のゼミでは、推し活をテーマに議論して、そこから政治の話にも少しなった。 熱心なファンにとって重要なのは、「自分たちの頑張りのおかげで推しの人気が出た」という有効性感覚なのであって（「頑張り」が実際に効いたのかどうかは定かでない）、推しが本当に人気者になってしまった時点で熱が冷める人もいるという。 そういう意味で、参政党の英語名称が”the Party of Do It Yourself”というのは、まさにそれが推し活の延長線上にある政党であることをうまく表しているというか。

揺れる～

「メタはここ数週間にわたり、中絶アクセスの支援団体、クィア団体、そしてリプロダクティブヘルス（性と生殖の健康）関連の組織に属する数十のアカウントを削除または制限しました。キャンペーン活動家たちは、これを『ここ数年で最大規模の検閲の波』の一つだと述べています。 10月に始まった一連の削除・制限措置は、世界中の50以上の団体のFacebook、Instagram、WhatsAppのアカウントを標的にしており、なかには数万人の利用者を支援する組織も含まれていました。」 www.theguardian.com/global-devel...

アメリカ、しばらく行けなさそう笑

極右が表現の自由だか言論の自由だかを気にかけているふりをしていた頃が少し懐かしい www.cnn.co.jp/usa/35241522...

あ、「たとえば100人が2290万円でできることと、10,000人が23億8千万円で出来ることには大きな違いがある。23億8千万円が使えるなら、みんなで使える施設をいろいろと作ることができる」と書くべきだった。

一応、東京都民だけれど、この投稿は良くない。東京一極集中が生み出す歪みに目を塞いだまま、都民に被害者意識を植え付けようとするような情報発信はやめるべき。 この元ポストには、「人口1人当たりの一般財源額でみれば、都は全国平均（22.9万円）と同水準（23.8万円）であり、是正すべき『偏在』は存在しません」という文章が出てくる。 しかし、たとえば100人が2380万円でできることと、10,000人が22億9千万円で出来ることには大きな違いがある。22億9千万円が使えるなら、みんなで使える施設をいろいろと作ることができる。 x.com/tocho_koho/s...

ネットでイラつくと言えば、画面全体を覆いつくす上に「閉じる」がどこにあるか見つけにくくしてる広告が最近やたら多い。あの広告出してる会社の商品は買うのやめたくなるくらい印象悪い。しかも広告が出た途端「閉じる」がどこにあるかを探すので、何の広告だったかさえ思いだせなかったりする。こっちを不快にするだけで広告としても機能してなくないか。

名誉毀損で何度も事実上の敗訴を被っている人物のこのしぐさ。言葉が出ない（本当は出るけど、ぐっと飲み込む）。 ただ、敵か味方かの対立軸を入れ替えてみると、不当な判決にもめげず一矢報いようとする勇敢な人物にみえるのだろう。道徳的評価が境界線を越えると180度変わるのは珍しくない。 そんな見方にはまったく同意できないけれども。 x.com/tHbsmZZBEz93...

このページをみていて、驚いた。以下、引用。 「2024年9月に能登を襲った豪雨では、現地で繋がっていた中学生の喜三翼音（きそ はのん）さんが亡くなりました。翼音さんはColaboが輪島で開催したカフェにも参加してくれていました。」 この出来事が強く印象に残っていたのは、能登震災について北陸中日新聞の前口憲幸さんが書いたコラムをまとめた『能登半島記（未完）』（時事通信社）を読んでいたため。 以下、この件についての文章を少し紹介したい。 congrant.com/project/cola...