85年前の今日、ベンヤミンはポルボウで生と死の境界を横断した。ある草稿から。

数年前、いや、コロナ禍の前くらいまでは、なぜか毎年、今日が金木犀の香りをはじめて聞く日だったのだけれど、このところ、もうそんな気配はどこにもない。どこか遠く、生まれる前の世界に連れてゆかれるような香り（by 九鬼周造）は、ベンヤミンの命日にふさわしかったのに。

先日、『三田文學』最新号を落掌しました。永井荷風文学賞の選考会全記録が掲載されています。濃密なドキュメントでした。各界で第一線の方々に拙著を丁寧に読んでいただいたこと、評価していただいたことに心から感謝します。 この機会に同誌に掲載された江本純子さんの戯曲のほか、候補作すべてを読み、あまり触れることのなかった分野も含め、文学の現在を知っていろいろ刺激になりました。同誌所収の永井荷風新人賞二作についても、若い著者たちの力量に目を見張りました。 受賞にあたっての感慨はブログに記しています。 before-and-afterimages.jp/news2009/202...

来週の木曜日10月2日(木) 19:00～20:30＠代官山 蔦屋書店です。オンライン配信もあります。 store.tsite.jp/daikanyama/e...

承前rp. パレスチナ国家承認、ポルトガルの発表も近い模様。フランスは明日と。

テロを賛美するべきではないという点では同意できたとしても、いまの米国をみてこのコラムを掲載するというのは、言論機関としての自殺ではないのか。思想信条を異にするものを国家権力を使ってでも弾圧したいという願望が隠しきれてない。 www.sankei.com/article/2025...

ディディ＝ユベルマンの近著 - Before- & Afterimages Blog ジョルジュ・ディディ＝ユベルマンの著書『歴史の天使たち——不安な時代のイメージ』が10月初めに刊行されると知った。最近の動向は追っていなかったが、これはベンヤミンの「歴史の概念について」、とくにパウル...

"卓抜な比較文学研究者によるヴァルター・ベンヤミン論六篇を日本版独自編集で収録。読むことと理解することの内奥に深く分け入り、それ自体の不可能性、〈いっさいの読みから距てられたままにとどまる〉地点へと無限に接近する苛烈な営為を通じて、ベンヤミンの現在性を甦らせる。ド・マンとデリダに見出された鬼才が拓く、比類なき読解の深淵。シリーズ・古典転生、第32回配本、本巻第31巻" ヴェルナー・ハーマッハー/ 清水一浩 編訳 『ベンヤミン読解』 urag.exblog.jp/244621229/

サヴィンコフの人生の背景となる歴史的経緯やその著作の日本における受容の時代状況までわかる解説。筆名ロープシンによる『蒼ざめた馬』は自分にとって特別な小説なので、この伝記をいつ読むべきか、逆に迷っている･･･　 note.com/sakuhinsha/n...

単純に、「ノイズを排除」という言い方ができてしまうことに驚いた。

「ブーム」が過ぎ、社会は急速に貧困に慣れていった 雨宮処凛さんの #コメントプラス 《年越し派遣村をピークとして「ブーム」のようになった「貧困」はその後ゆるやかに減速し、社会は急速に貧困に慣れていきました。 だからこそ、ちょっとやそっとのことではもう注目されない。派遣村以上の「絵」がないと取材もされない。 貧困問題を訴えたいなら、次々と「新語」「真新しい現象」を発明してメディアに上手にプレゼンしないと見向きもされないというような姿勢を感じたのは一度や二度ではありません》 www.asahi.com/articles/AST...

組織のなかにいたときには、「60歳を越えたら判断力が鈍る」ことを観察してきたし（例外はいる）自戒もしてきたけれど、どうも70歳近くなると、もっと私的な場で、「地金が出る」と言うのか、いっそうなまなましい何かが露呈することを目撃して（おもに男性）、気をつけたいと思った。ある種のSNSはそれが一番表に出やすい気がして、早々に止めたくなっている。

専門家でなければわからないこと、業界内でしかわからない評価があることは否定しないが、じゃあ、専門家や業界内だけで「批評」していればいいのか、と言えばそうじゃないでしょう。さまざまな立場からの批評があっていいのだし、そもそも専門・業界のメディアがちゃんと機能していないことのほうが問題だろうと思う。何ごとにつけ、ですが（何かを見た･･･）。

読んでいませんが、藤村龍至さんの「［登壇後記］未来都市は荒屋敷である──対談のあとに」の「荒屋敷」は「アラヤ識」から来ているはず。『ゲンロン』はロシア関係が強い。万博や都市計画、建築について、こうしたメディアが積極的に取り上げるのはいいことだと思う。というか、山本vs藤本対談を仕掛けたのもゲンロンだし、「専門」メディアのほうがどうしているのか？という感じではあるが。 webgenron.com/articles/gen...

たぶん、ぼくを含めて大部分の日本人は、今回の事件が起きるまでチャーリー・カークなる人物のことを知らなかったのではないかと思う。 ところが、その人が保守的なコメンテーターだったというだけで、加害者の素性もわからないうちから「左派／リベラルの危険性」を日本のインフルエンサーがさかんに論じ始めるのは、相当に異常な事態だった。 死者を悼んでいるようでいながら、結局は「自陣営のプラス／相手側陣営のマイナス」だとしてゲームに利用しているだけの話。安倍さんが殺害されたときと似た展開ではあれ、あのときにはまだ安倍さんの人物像をみなが知っていたわけだが、今回のはそうでない分、よりいっそうゲーム感が強い。

SNS禁止令への抗議デモで政権が崩壊してしまったネパール、凄い事に……。 暴動後軍は戒厳令を発動して集会を禁止。 その結果Z世代を中心にDiscordに集まり、新しい指導者や各種の意思決定が文字チャットやビデオ通話で行われる事に。 サーバーの人数は14.5万人を越え、国営放送やニュース番組でもDiscordの画面を生放送。今やDiscordがネパール政治の中心となっている。 しかし参加者も国民も、早々にSNSの限界に気付いたと言う。 SNSは第一フェーズ、抗議デモを呼びかけて行動を促す為には素晴らしい効力を発揮したが1/2 www.nytimes.com/2025/09/11/w...

永井荷風文学賞を受賞して - Before- & Afterimages Blog 昨日（2025年9月11日）、市川市および三田文学会によって創設された永井荷風文学賞の第一回受賞作に拙著『磯崎新論』が選ばれたとの発表があった。今後、『三田文學』に選考の様子が全文掲載されるとのことで...

詳しく書いていただきました。ありがとうございます。 永井荷風賞に東大名誉教授、田中純さんの評論「磯崎新論」　市川市と三田文学会が創設 www.sankei.com/article/2025...

『磯崎新論』で永井荷風文学賞をいただきました。選考の様子は『三田文學』162号（2025年9月29日刊行）に掲載されるそうです。 晩年に「文人（man of letters）」と呼ばれたいと語った磯崎さんなので、自分の評伝が荷風の名を冠した賞を受賞したことは、嬉しく思っていただけるのではないかと信じたい。これを機会に「文人」磯崎新の側面が知られ、磯崎さんの建築への関心も喚起できれば幸いです。閉塞する日本社会には、磯崎さんのようなスケールの大きな発想がとても必要に思います。 www.city.ichikawa.lg.jp/cul01/nagaik...

『零落の賦』 - Before- & Afterimages Blog 四方田犬彦さんから頂戴した『零落の賦』読了。 長谷川泰子に始まり、「流刑の神々」（ハイネ）からダンテ、ラブレー、スウィフトを辿る零落のヨーロッパ文学史はプルースト『失われた時を求...

ワルシャワで新しく開業した地下鉄駅の中に、通勤・通学中の国民にスマホから離れて本を読んでもらおうと革新的な図書館が設置されたという記事。 ここには16K冊の蔵書があり、非接触式の貸し出しシステムによって年中無休、24時間利用可能な空間となっている。 返却はここ以外に路面に複数の返却ポストが設置されているそう。 壁には水耕栽培でハーブや花が植えられており、学習スペースやPC貸し出しもやっている。 ポはWW2で公共図書館の70%を喪失。また調査によれば近年読書離れが進んでおり、そういった背景もあって国民に読書を推奨している。 www.theguardian.com/world/2025/s...

宮本隆司さんとの対談です。【イベント＆オンライン配信(Zoom)】 宮本 隆司×田中 純 『本気にすることができない渋谷』刊行記念 トークイベント　蔦屋書店3号館 2階 SHARE LOUNGE／ZOOM配信 2025年 10月02日(木) store.tsite.jp/daikanyama/e...

表象文化論の歴史化？ - Before- & Afterimages Blog 先週末に表象文化論学会大会（サイト）が武蔵大学で開かれた。８月末というのに思いがけぬ酷暑で、体の状態が万全ではなかったため、初日のイヴェントと学会賞授賞式、懇親会しか参加できなかったが、いままでで最多...

ベンヤミンをめぐる２冊の書物について - Before- & Afterimages Blog ベンヤミンのテクストに関する２冊の書物を読んだので、雑感を書いておきたい。書評ではなく、あくまで個人的な関心の記録である。 長谷正人『ベンヤミンの映画俳優論──複製芸術論文を読み直す』（岩波書店...

トランプ米政権、スミソニアン博物館に見直し通告　大統領の見解に沿った展示の徹底へ　www.cnn.co.jp/usa/35236650... 「トランプ政権高官は…調査対象とするのは一般向けの展示内容や、展示品の選定にかかわる収集・選別の手順、現在と今後の展示計画、収蔵品や収集品の利用、解説基準に関するガイドライン まず対象となるのは首都ワシントンにある国立アメリカ歴史博物館、国立自然史博物館、国立アフリカ系アメリカ人歴史文化博物館、国立アメリカ先住民博物館、国立航空宇宙博物館、スミソニアン・アメリカ美術館、国立肖像画美術館、ハーシュホーン美術・彫刻庭園の８施設」

「戦後80年の懐かしいとワクワク」 - Before- & Afterimages Blog 『文藝春秋』の特集「戦後80年の懐かしいとワクワク」に寄稿しました。書誌情報は、田中純「駅の伝言板と新聞の尋ね人」、『文藝春秋』2025年9月特大号、文藝春秋、2025年、484-485頁。なお、タイ...

一般社団法人日本ペンクラブ、女性作家委員会、言論表現委員会は、本日（8/5）15時、緊急声明を発出しました。 【日本ペンクラブ緊急声明】 「選挙が終わってもなお続く、排外的言論の横行を懸念します」 japanpen.or.jp

グレゴリー・ベイトソンの分裂生成（schismogenesis） - Before- & Afterimages Blog 先日のラウンドテーブルではたびたびグレゴリー・ベイトソンの理論が参照された。デヴィッド・グレーバーの概念「創造的拒絶（creative refusal）」のもとになったベイトソンの「分裂生成（schi...

遊戯（プレイ）としての人文学 - Before- & Afterimages Blog 去る7月26日にラウンドテーブル「分裂／生成の感性術（エステティクス）──遊戯（プレイ）としての人文学」が開催された【詳細情報】。これは筆者が大学院で開講した授業「文化クリティシズム」の成果発表という...

春ねむりさんから新譜CD『ekkolaptómenos』（孵化する／される）を頂戴しました。このタイトルは磯崎さんの「孵化過程」的。ほかにも「angelus novus（新しい天使）」「iconoclasm（聖像破壊）」（https://www.youtube.com/watch?v=KcnnPPTEjhg）など、魅力的なタイトル。個人的には「テラン・ヴァーグ」が好きです。 春ねむりさんは最近では参政党さや氏への怒りを表明した曲「IGMF」で知られています。→記事：https://natalie.mu/music/news/633408

表象文化論学会「渡邊守章賞」を受賞いたしました。学会員による学会への特別な貢献に対して授けられる賞で、「当該年度に発表された著作・作品等に加えて、表象文化論ならびに学会に対するこれまでの貢献も考慮」とのことです。（なお、記事中の「渡邉」は「渡邊」です）。https://www.repre.org/association/awards/16_1/index.php

東京大学大学院表象文化論コースで開講している講義「文化クリティシズム」（担当教員:田中純）の成果発表として、学生有志によるシンポジウムを2025年7月26日（土）に開催いたします。ご関心のある方はどうぞご参加ください。申込先： forms.gle/EoRhXKxX9qV9...

政治家や候補の差別発言、ヘイトスピーチを報道する時には、特に見出しではその発言内容を引用せずに、「誰々が差別発言／ヘイトスピーチ」と報じるべきじゃないですかね。差別発言を目に見える形にしてしまってそれ自体が対象となる人にはつらいし、十分に位置づけずに拡散すると差別が再生産されます。

ヘッセルの『ベルリン散歩』、邦訳はありがたい。日本語で読んで、いままで見落としていた、ベンヤミンの『幼年時代』を考えるうえでのヒントもあった。あらたに描かれた地図も見やすいのだが、やや味気ないので、古い地図を活かすことを考えたい。この本とは大きくは関係しないが、ヘッセルの幼少年時代について少し詳しく調べてみたら、各種の情報が食い違っていた。ベンヤミンもそうなのだけど、基礎的事実ほど、孫引きで流布してしまうことが多いように思う。

インタヴューでも答えたし、本そのものにも書いたことなのだが、磯崎さんは自分で自分の仕事に事後的に注釈を付け加えすぎるので、いったんそれを時系列で整理することが必要になった。それと自分の「謎」も語りすぎなので、「謎」というキーワードをわれわれが引きずりすぎるのもマイナスが大きいと思っている。このいずれも踏まえたうえで、それでも謎として残り、時系列を逸脱するものこそが重要。こうしたストラテジーがあるのだ、とインタヴューで改めてはっきりさせられたのは良かったと思う。

REPREのインタヴューとも関係するけれど、対象との距離の設定は難しい。磯崎さんの著作の「まとめ記事」みたいな「評伝」にならないように──「まとめ記事」にそれ固有の価値があることは否定しないが──極力注意していても、磯崎さんの生前だったら、おそらく最終的な着地点はかなり違ったものになっただろう。対象にフィードバックされる条件下で、その対象の言説の「まとめ記事」でもたんなるファンの賛辞でもないものを書くことの難しさは、増しているようにも思う。

そう言えば、編集部からのお題は「ムネモシュネ・アトラス」と絡めて、といった感じだったと思うけど、いまさらという気持ちがあって、まったく別のことにした。そもそも、こうした複数著者による特集企画の場合、最初の企画案で振られるテーマは、過去の自分の関心事であることが多い気がする。

『ユリイカ』の岡﨑さん特集は、パートナーのぱくきょんみさんのインタヴューに尽きる。

『磯崎新論』をきっかけとする「評伝的なるもの」をめぐる（超）ロング・インタビューが公開されました。裏話や種明かしがいろいろあります。 特集のほかの論考や編集長によるprefaceに関する感想はいずれブログに書きます。 www.repre.org/repre/vol54/...

『ユリイカ』岡﨑乾二郎特集号に寄稿 - Before- & Afterimages Blog 論文を寄稿しました。書誌情報は、田中純「おかざき乾じろのヨーサイ──一九六〇年前後の東京の幼年時代のために」、『ユリイカ』、2025年7月臨時増刊号、青土社、2025年、294-303頁。

『このとき、夜のはずれで、サイレンが鳴った』 - Before- & Afterimages Blog 原広司と吉見俊哉の対談集『このとき、夜のはずれで、サイレンが鳴った』（岩波書店）を読んだ。原最晩年の対談であり、原の逝去により、計画していた内容の途中で終わってしまったという。吉見による長めのまえがき...

超都市の幻視的予言者（2025.6.23公開ゼミ補足） - Before- & Afterimages Blog 拙著『磯崎新論』から抽出された磯崎新の思考をもとに、「超都市（ハイパー・ヴィレッジ）」を構想する東京藝大藤村研究室公開ゼミ（2025.6.23）が開催された。そこにおけるわたしの発言の骨子および背景を...

アウエルバッハとブルジョア的心性 - Before- & Afterimages Blog エーリッヒ・アウエルバッハ『文学と戦争』、言わずと知れた碩学がトルコ語で発表した文献が中心。「文学と戦争」やヨーロッパにおける国語やリアリズムの成立、ダンテなどの人物論ほか、さまざまな主題の内容なので...

明日、東京藝大の「シン磯崎」の集会に伺います。 x.com/ryuji_fujimu...

青空の利用者が半減しているという記事を読んだ。大統領選前後に急増したのが異常なのだろう。どんなSNSでもエコーチェンバーはあるし、党派的な意見を表明することもまったく自由なんだから騒ぐことでもない。他方、Twitter黎明期の活気や興奮はもうどのSNSにも感じなくて、告知ばかりになりそう。PCに向かうと仕事ばかりして、あえてSNSに書くことがないからか･･･　これも愚痴だな。

退職以降、在職中は二重三重にかけていたリミッターを外すことをモットーにしてきたのだけど、久しぶりに授業を始めると、知らず知らずリミッターを復活させている･･･

論集の寄稿依頼、自分に依頼があった時点より数カ月前に他人に打診があったと別ルートでわかり、？？？だったが、いずれにしても受けるべき仕事でもないので断わった。こういう依頼の仕方をするほうもするほうだが、先行していたのがあくまで内々の打診ならば、外で無闇に吹聴する人たちもどうかと思った。情報のマネージメントは大事。

ドイツで1900年前後に流行した「透かし絵葉書」の一種で「月光葉書」。背後から光を当てると窓や街灯が光って見える。これは色も数種類あるし、市電などのライトまで透かしになっている凝ったもの。

Discoverを使って見ているが、某SNSほどではなくとも、結局、あまり知りたくもないことが呟かれているのが流れてくることに変わりはないわけだし、青空のプラットフォーム自体、どこを目指そうとするのかよくわからないところはある。

KAAK 神奈川芸術劇場でデヴィッド・ボウイ原案（脚本：エンダ・ウォルシュ）の『LAZARUS』公演（演出：白井晃、主演：松岡充）を見ました。その感想 before-and-afterimages.jp/news2009/202...