ほめぴえ
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昼行灯
石川栄作『「ニーベルンゲンの歌」を読む』2001年 独文学の最高傑作と謳われる古典、と言うよりもワーグナーの楽劇『ニーベルングの指環』の原作と言ったほうが伝わるかもしれません。 ゲルマン民族大移動時代に産声を上げた伝承で、十三世紀初頭に英雄叙事詩として定着したものと考えられます。 主人公はジークフリートと思いきや、妻のクリームヒルトを中心に据える事で前編と後編の異なる伝承を結びつけた作品です。 ゲーテはこれに「両編の趣きはおのずから異なる。前編はより多く華麗、後編はより多く強烈。しかし両編ともその内容において、また形式において、相互にまったく均衡を保っている」との感想を残しています。
about 13 hours ago
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書店に行くのは良いものです。まったくノーチェックの新刊が出ていたので買おうと思っていた本と実際に買った本が違うものになっています🤣
1 day ago
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ヴィルヘルム・グレンベック 山室静訳『北欧神話と伝説』2009年 デンマークの文化史家の著者がエッダを創訳し1927年に刊行されたものの全訳日本語版(1971年)が文庫収録されています。 訳者は「北欧神話の代表的なものをほぼ網羅し、原典ではバラバラに近い話に文化私的考察を交えて脈絡をつけ統一的発展にその経路を辿っている」と述べ、確かに読みやすい物語だと言えます。 また、神話の継続となる伝説やサガを後篇として加えて(全体の6割超)北欧精神と文学の流れを展望できる点が優れていると思います。 読んで思い出したのが『ファイアーエムブレム』でして、あれは北欧神話を偏愛し過ぎですね。
1 day ago
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菅原邦城『概説 北欧神話』2024年 『北欧神話(1984年刊)』の復刻版です。スノップ・ストゥルルソンの散文のエッダ他、考古学資料から多角的に、原典としての北欧神話を検証した内容になっています。 印欧語族の移動で十世紀前後に成立した新しい神話であり、ゲルマン神話の影響が大きく見て取れます。また、ラグナロクには新約聖書「ヨハネの黙示録」の影響が色濃くあります。 正鵠を得ているか定かではありませんが、北欧神話の大きな特徴は運命論だと思います。また、農耕畜産信仰の意味合いが強く「豚」が尊ばれている印象を受けます。 あと、破壊的な自然の脅威の擬人化として巨人があり、苛酷な環境を思わせます。
3 days ago
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キャサリン・ライアン・ハワード 髙山祥子訳『56日間』令和4年 出会いから死体発見までの56日間に一体何が起きたのか? 2020年春のダブリンで一組の男女が運命的な出会いをして惹かれ合い同棲を始めます。 これはラブロマンスであり、サスペンスであってミステリーでもあります。そしてロックダウンが言わずもがなという特殊設定として上手く機能するように組み込まれているのです。故にパンデミックは主題ではありません。 現在と過去と二人の視点が交錯する構成は、自分が記憶喪失のサイコキラーになった気分でした。個人的には「今日」だけを最初に読めればよかったなあと思います。多様な読み方が可能な小説です。
5 days ago
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鈴木晶『フロムに学ぶ「愛する」ための心理学』2019年 エイリッヒ・フロム『愛するということ(The Art of Loving)』日本語新訳者によるフロム心理学のエッセンスを抽出した入門書です。 「愛は成熟した大人だけが経験できるものであり、本当の愛を体験するには、愛とはいったい何なのかを深く学び、愛する技術を習得する必要がある」との事ですが、これは愛を経験する中でのみ成長する事を示しています。 消費に幸福感を見出す事で愛もまた消費の対象に貶められてしまった事で、現代人は愛を誤解してしまった模様です。 本書を通して個人的な問題(解決はできないけれど)の要点が詳らかになり僥倖でした。
6 days ago
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#つぶやき養生
12月です。ここからは春から本気を出すための養生期間だそうです。 負の思考をリセットするテクニックとして、手首に輪ゴムを着けてパチンと弾く小技がある事を知りました。うーん、どうだろうか🙄 また、ストレスによる凝りの根本はおでこにあるらしい。とりあへず深呼吸。 花粉症は冬に養生しておかないと春に症状が爆発するので早めの対策が肝要らしいです。なるほどですね。
6 days ago
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カミュ『シーシュポスの神話』昭和44年(平成18年改版) ギリシャ神話の寓話を比喩として、その根本思想である不条理の哲学を理論的に展開追求する事で自身の作品の根底を支える思想を示したエッセイです。 その実は「人生が生きる価値はあるのか否か」の論証であって、自殺が主題となっています。 ・自死は不条理に目を背ける行為 ・不条理の下では行為の結果は等価値 ・人生の価値はその不毛性で測られる ・人間の尊厳とは、自己の在り方に反抗を試み、不毛な努力を続ける姿勢にある このように演繹的に進行してシーシュポスの寓話へと帰結します。 考えた事のなかった視点とその洞察に驚愕する形而上哲学でした。
6 days ago
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11月は27冊読んで、12冊迎え入れました。夏休み並によく読みました。
8 days ago
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吉田敦彦『オイディプスの謎』2011年 ソポクレスは『オイディプス王』と『コロノスのオイディプス』という二つの物語で深遠な問いを立てています。 ・人間の本性とは何か? ・苛烈な運命の下で、人間はいかに生きるべきか? 筆者の物語と史観を掘り下げた真に迫る解説をもって、悲劇の白眉たる凄味を現代人に伝えています。 スピンクスの難問がオイディプスそのものを指し示す問となり「人間の正体がじつは何であり、何でありえるのか?」という解をその生涯を通して表しているのです。 張巡らされた伏線、問の解が表す新たな問、科白に含まれる二重の意味などを通じて古典悲劇がとても面白い作品として読み解けました。
8 days ago
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ヒュギーヌス 松田治・青山照男 訳『ギリシャ神話集』2005年 二世紀頃、ローマ一般大衆に向けてラテン語で編まれた277話から成る神話集です。事典的な意味合いが強い。 著者が正体不明かつ写本から校訂本となる16世紀までの間に誤字脱字欠落加筆修正もあり意味不明な所も多いのですが、註釈に助けられます。 「王様の耳はロバの耳」と「触れたものが黄金に変わる王様の話」が繋がっていたり、『走れメロス』の原型の話があったりと瑣末を楽しめました。 ローマ人にとっては名を覚える事が教養らしく、察するには記紀の神産みが如き羅列には漢文の素読の様な意味合いがあったのかもしれません。
9 days ago
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W・ゴールディング 平井正穂訳『蠅の王』昭和50年(平成9年改版) 裏表紙にある「未来での大戦の中、疎開する少年たちは太平洋の孤島に漂着。大人のいない世界で秩序だった生活を送ろうとするが、心に巣食う野獣が目覚め内部対立から闘争へと駆り立てられていく」が話の流れとしては全てなのですが、その中の描写にある機微に(ラヴクラフトを読んだことがないのですが)クトゥルフ神話ってこんな感じなのかな?と思ってしまいました。 また、ラストの士官との会話の内にはヘーゲルの弁証法があると思うのですが、自らを律するに至らない稚拙さと仰げる主人の対比として、キリスト教的な神と人の対比のように感じられました。
11 days ago
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蕎麦の実は三角形をしています。これを別の言い方をすると三つの角でミカドと読めます。帝は天皇を意味するってんで、そう呼んだら不敬にあたるだろって事で「お側にお仕え致します」とオソバと呼び変えられたという話があるそうです。へー😮
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EP. 528『@出石 、其ノ二 - まっしろい出石焼をながめては』
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11 days ago
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日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺『薬屋のひとりごと16巻』2025年 TVアニメ2期で追い抜かれてしまったので展開は既に分かっていたのですが、砦編まだ終わらんのかい?!コミカライズ版も丁寧な展開なのでこればかりはしょうかないのかなと思います。 それにしても楼蘭が猫猫に見せる笑顔は『もののけ姫』でアシタカがカヤに見せる笑顔と重なるものがあります。ここでの楼蘭のそれは仮面としての笑顔ではなく、今生の別れの葛藤を見せまいとする、演技としての渾身の笑みを描いている作画だなあと思いました。 まあ、カヤの小刀同様の運命を辿る猫猫のカンザシも相まっての重なりでもありますが。
13 days ago
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阿刀田高『私のギリシャ神話』2002年 世界一有名な神話であるにも関わらず、膨大すぎて断片的にしかわからないギリシャ神話をどこから斬り込むべきか…と困った時の阿刀田高なのです。1999年の『NHK人間講座』テキストを加筆修正した上で挿絵に世界の名画を添えたカラー文庫版。 人間にとっての神とは、ギリシャ神話では「敬愛」日本だと「畏怖」と対蹠的な印象です。その為か、ギリシャ人にとってのアイデンティティ、または哲学として現在でも身近な存在として有るようです。 聖闘士星矢世代にとって意外なのが、星座は重要ではないという事です。これはエジプト・バビロニア神話の置換えとしての要素が強いみたいですね。
13 days ago
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中央公論新社編『教科書名短篇 科学随筆集』2021年 1946年以降の中学国語教科書掲載作品から独自編集した文庫オリジナルシリーズのひとつです。 科学とは数理に限定して考えがちなものですが、本書を読むと「コップの中の水が教えてくれた事」という例え話が想起されます。 算数で量、理科で正体、社会で輸送、美術で鑑賞、音楽で演奏、技術で素材、保健体育で必要性、道徳で分かつ気持ちを学び、国語でこの話を理解して伝える事が出来るようになる。外国語で世界中に伝え、哲学でその意味を考える。世界をただ見るだけの人生で終わらせない為に。 科学的思考とは大局的には此等を包括する考え方だと思うのです。
14 days ago
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LIFESTYLE COLLEGE『文芸評論家 三宅香帆さん登場!』 批評とは、読み方の指標であって(それが正解ではないけれど)一つの考え方を示した感想と捉えたらよさそうです。 自分の本の選び方としては、ベストセラーの棚を最初に見ない。これは他の人がどんな本を読んでいるのかと比べない事が大切になるのかと。 今、読んで欲しい本として『ブレイクショットの軌跡』と『カウンセリングとは何か』を紹介。
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文芸評論家 三宅香帆さんが登場!
https://open.spotify.com/episode/4uu00a5RXxAzZJqr2Clmh7?si=6BMNTzBYTXeMn08RaURwdQ&t=1685
14 days ago
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NHK『こころの時代 ヴィクトール・フランクル(2)苦悩を生き抜く』より『夜の霧』から わたしたちが生きることから なにを期待するかではなく、 むしろひたすら、生きることが わたしたちからなにを期待しているかが問題なのだ ピコーン💡👀(悟りを得た)
15 days ago
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新嘗祭とはアドベントカレンダー開封の儀と心得たり!(違)
15 days ago
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ビブリオシカより平木典子『アサーション入門』について『ドラえもん』で例えると分かりやすいと思います。 (1)ノンアサーティブ、のび太タイプ (2)アグレッシブ、ジャイアンタイプ (3)アサーティブ、しずかちゃんタイプ さて、スネ夫はどうかと言うと、(1)でありながら虎視眈々と自分の都合のいい方向に誘導するデマゴーグタイプとなるのかな。 アサーティブを心掛けたほうが問題は起こりにくいと言えそうです。その為、外資での新人研修では自分が他社からどのように見られるか客観視する為に演技指導があるのだとか。
www.j-wave.co.jp/original/bib...
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ARCHIVE | NTT Group BIBLIOTHECA -THE WEEKEND LIBRARY- : J-WAVE 81.3 FM RADIO
https://www.j-wave.co.jp/original/bibliotheca/entry/251115.html
15 days ago
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南方熊楠『十二支考(下)』1994年 羊、猴、鶏、犬、猪、鼠の六支。牛がいないのは、関東大震災で鼠が没稿、打ち切りの為。腹稿が近年発見されました。 羊は意外と凶暴らしく、ヤギと比べても両者共に気性が荒い一面があるようで意外です。 猿は尻尾のあるモンキー、猴は尻尾のないエイプの意味合いなのだそう。近世以前まで二足歩行の猿猴は鳥に分類されていたそうです。 インド叙事詩『ラーマーヤナ』の要約と解説が興味深いですね。これが誤解釈のまま伝来して日本で青面金剛になった模様。 また、丹心丹誠の丹に戯れで猿の尻の赤をかけたお遊びから「真っ赤な嘘」と正反対の意味を取る言葉遊びなぞいとおかし。(続く)
16 days ago
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南方熊楠『十二支考(上)』1994年 十二支の動物に関する事柄を思い付くままに書き連ねた雑誌連載をまとめたものです。虎、兎、竜、蛇、馬の五支。 ルビも多く付されており、口語体なので現代人にも読める形にはなっていますが、連想から別の動物の話になり、鉱物の話から植物になったり、生態や伝承の他にも食べ方やその効能に至るまで自由闊達が過ぎます。加えて改行もなく延々と続く事が読み難さになります。 虎では、当時ネコ科もイヌ科も同じ肉食動物の括りで同じ様に見られていた印象でごちゃ混ぜに出てきます。 兎は、意外と性に関わる象徴として考えられていたようですね。 辰巳午に続く。
16 days ago
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ヒストリーチャンネル『ディズニー:夢と魔法の物語 テーマパーク構想』を見たのだけれど壮絶でした。 第二次大戦中にスタジオを上場した事で取締役会の承認無しには何事も出来なくなってしまった。ランド構想も勿論NG!ウォルト個人で建設する事にする。そこで兄ロイはディズニーというネーミングライツを設定してスタジオから資金を巻き上げる。しかし、土地の取得で資金が尽きる。目を付けたのはTV業界。新興のABCに番組提供と引換にパーク建設費を引き出す事に成功するも地盤の問題で水が溜められない事が発覚。地元農家の知恵で難を乗り越えるも一部未完成のまま開園。しかし、大成功。スタジオが株を買取運営に参入する運びに。
17 days ago
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上司が「コレ絵が綺麗だから気になってたんだよね。ちょっと先に見に行ってどうだったか教えてよ」とか言うのでスッパり断ったのですが、その時は二人とも細田守と新海誠がごっちゃになっていたのでした。(あるある)
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17 days ago
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池田清彦『もうすぐいなくなります 絶滅の生物学』令和4年 「絶滅から生命の進化を読み解く新しい生物学の教科書」と銘打たれています。 養老孟司は解説で「はたして絶滅とは何を意味するか、丁寧に鋭く突く」と述べていますが、基本的な語彙の説明にこそ丁寧かつ文化系であって、人文系を対象とした生物学入門一歩手前という趣きがあります。 何故絶滅するのかという問いには、環境適応が最大の要因として考えられる所ではあります。環境を人為的に変容させる力があるという意味で人類の影響は大きいのだと思います。 種や系統においても生物個体同様の寿命があるのか?という解決不能な難問こそ真相なのだろうとも思う。
17 days ago
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関節がひとつ動かすことが出来ないだけでこんなにもぎこちない動作しか出来ない事を体感する日が来るとは努々思ってもいなかったのですが、ふと思い出したのが、子供の頃にゾイドを上手に組み立てられなくて瞬間接着剤でくっつけたら物凄いぎこちない動作を目の当たりにした事だったりしました。Take care of yourself!!
19 days ago
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凪良ゆう『滅びの前のシャングリラ』2024年 「一ヶ月後、小惑星が衝突し、地球は滅びる」 運命を回避しようと足掻いたりする事もなく、世界はあっさりと滅亡を受け入れる所から物語は始まります。故に最期の瞬間までどうやって過ごすのか?という四人の眼差しが、幸せとは何なのか?という問いを読者に投げかける作品となっているのだと思います。 眼差しの語るジャンルこそバラバラなのですが、共に幸せのテンプレートから外れた日常から世界の滅亡の間際に至り、自身の居場所に納まる事で「自由を手にした=幸せの結末」という印象です。 ある意味でパンデミックを経験した後の世界にこそ響く世界観の作品かなと思います。
21 days ago
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後藤明『世界神話学入門』2017年 海洋人類学者の著者が何故神話かと言えば「DNA分析によるホモサピエンス移動の軌跡を、神話を分析する事でその足跡がより理解出来る為」だそうです。 本著はマイケル・ヴィツェル『世界神話の起源』で人類最古の神話的思考と人類最古の物語に大別した学説をベースに仮説を思索します。類例として各地の神話が読めてしまう特典付き。 指輪物語のトールキンはかつて「その報いは人間とエルフを少しずつオークに変えてしまうことだ」と国策的ナショナリズム扇動に神話を用いた事に対して述べています。古層である神話的思考とは、この言葉を再度見つめ直す意味を持っているものかと思います。
22 days ago
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中村文則『教団X』2017年 職場で定年退職後の延長雇用の方と組む機会がしばしばありまして、先日面白い小説が何かないかと探しているという話になったのでオススメ小説を交換して手元に来たものがコレです。作者最長編を渡してくる辺りが凄いマインドだなあ。 作中の「教祖の奇妙な話」にて始原仏教からインド哲学の話に始まり、偶然にしてもまたインド……スタンド使い同士は惹かれ合う…!などと因縁を感じてしまいました。 内容は、対立する宗教団体の教祖によって運命を翻弄される4人の男女の物語なのですが、世界系に収束する事で全てを煙に巻かれてしまったという感じがします。 その他、私感はツリーに書いてみます。
23 days ago
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内田洋子『ジーノの家 イタリア10景』2013年 日本エッセイスト・クラブ賞と講談社エッセイ賞という邦国でのエッセイに対する二大賞を史上初めてダブル受賞したという怪作です。 豊饒な語彙をやさしく噛み砕いた様な緻密な文体でもって「様々な色彩が宿っている事を感じられる」そんな文章が綴られています。 また、名もなき人間の生き様にしみじみとしたとした読後感を残す事が、人間にある深みを引き出せている証左としての美文にも思えます。 事実は小説より奇なりとはよく言ったものですが、イタリアという見知らぬ土地はさながら異世界の様相で、小説のように読めてしまう魅力のあるエッセイでした。
25 days ago
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河合隼雄『ケルトを巡る旅 神話と伝説の地』2010年 2001年放送のNHK「ハイビジョンスペシャル 河合隼雄 ケルト昔話の旅」を書籍化したものですが、旅行記でもなければ調査研究の報告書でもありません。しかし、ケルト文化についての概要が読み解く思索エッセイのような深みを覚えました。 特に儀式に関してのホイジンガ『ホモ・ルーデンス』を取り上げての考察では、インド哲学においての行為のヨーガに通じる見解を表していた事が非常に興味深ったですね。 ケルトに見られる丸の中に十字のシンボルは太陽と火水風土を表すそうな。キリスト教以前の文化なので、そりゃ受難のシンボルであるわけがないですね。
26 days ago
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100分de名著を見て『ウェイリー版源氏物語』思いの外に面白いなあと思ったのですが、文庫で出ていないんですね。
26 days ago
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腕貫探偵シリーズもまだ文庫化されていない最新刊で終わってしまうのですね…。
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28 days ago
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長崎暢子 山内昌之(編)『現代アジア論の名著』1992年 東大教養学部の教官(当時)による「新入学生はこれくらい読んどけ!」的な目録の書評集です。 30年経ってもなお何冊かは現在でも価値ある名著だと思います。 近代韓国史においての経済的・文化的断絶については日本人が理解し得ないからこそ学ばねばならない事だと思いましたし、ナショナリズムという哲学的に貧困でいかがわしいものに人々を惹きつける力がある事にも考えさせられました。 ガンディーの『ヒンドゥ・スワラージ』は近代文明に対する弾劾の書であり、実現したインド独立の最大の批判者が著者だったんですね。
28 days ago
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上村勝彦『バガヴァッド・ギーターの世界』2007年 岩波文庫での訳者である著者が、1995年のNHK講座テキストを底盤に同書の解説を数行毎に付した労書です。 紀元後一世紀前後のインドにはアートマン(自己)の内にブラフマン(至高存在)があり、そこには神々をはじめとする一切が在するという思想が定着していた事が解ります。この考えは大乗仏教に取り入れられて、日本仏教の本覚思想へと連なります。 仏教経典を絡めてのサンスクリット語原文解説を平易に行っている所に凄味があります。 物語は、顕現するカーラ(時間・運命・死を司る神)が『マハーバーラタ』という叙事詩自体の主軸を伴う事が神話を醸しています。
29 days ago
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山際素男『マハーバーラタ インド千夜一夜物語』2002年 古代インドの大叙事詩から16篇を完訳版の訳者がセレクトしています。本筋は壮大な相続闘争で世界が滅亡寸前にまで陥るらしいのですが、ここでは枝葉にあたる説話や神話を中心に紹介されています。 面白かったエピソードとしては「死神ヤマを誑かした女」が随一ですね。仏教では夜摩=閻魔大王になるのですが、ここでは印象が全く違って人間臭くて泥臭いのが神様です。インドラ天(=帝釈天)に至ってはもう小物感がすごくて笑ってしまいます。 インド哲学についても一部の説話で触れられますが、そちらはバガヴァッド・ギーターと呼ばれる説話になるそうです。
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イタロ・カルヴィーノ/須賀敦子[訳]『なぜ古典を読むのか』2012年 著者の「古典文学」に関する各所寄稿文を一冊にまとめた書評作家論です。 表題の文学論の噛み締める内容にトキメキますが、書評は唯一「懐疑主義と科学と文学が一体であると理解した」とレーモン・クノーに評されたフローベールの『三つの物語』が機会があれば読みたいと思えたくらいです。 以下、14の古典定義の中で好きなひとつを抜粋。 「古典とは、読んでそれが好きになった人にとって、ひとつの豊かさとなる本だ。しかし、これを、よりよい条件で初めて味わう幸運にまだめぐりあっていない人間にとっても、同じくらい重要な資産だ。」
about 1 month ago
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古市憲寿『謎とき 世界の宗教・神話』2023年 キリスト教、ロシア正教、イスラム教、ゾロアスター教、ヒンドゥー教、ジャイナ教、儒教、密教、北欧神話、万葉集(?)、日本仏教、古代宗教の各専門家と著者(聞き手)との対談集です。前作『10分で名著』からの第二弾になります。 広くて浅いけれど「なるほど!そういうことなのね」とツボだけ押さえた入門書としてとても良いと思います。 私の場合は宗教よりも神話の方に興味があったのですけれど、一挙両得ということで丁度いい一冊でした。 巻末に世界宗教史がコンパクトにまとめてあるのが案外役に立ちました。世界史忘れかけていたので…。
about 1 month ago
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医療介護報酬は日本で唯一残っている官製報酬という事で細かく規定されているはずなのだけれど、患者からすると全くのブラックボックスなので、支払いをする段階になってはじめて知らされる意味では時価の鮨屋と同じ恐怖感があります。 (昨日、病院に行ったらその場で手術される事になったので…)
about 1 month ago
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小川仁志『ジブリアニメで哲学する』2017年 取り上げられているものは宮崎駿監督作品オンリーなのが解せないところではありますが、世間的にジブリ=宮崎駿だという事はわかります。 本当に本編のみでの考察なんでしょう。フォークロア抜きの『風の谷のナウシカ』『天空の城ラピュタ』とマルクス主義抜きの『紅の豚』『もののけ姫』には考察に深みが感じられませんでした。 逆に『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』の考察は面白かったです。 いやはや「これはね…」と絶対的な一つの答えを提示することなく、多くの人が様々な考え方をする所が作品の良さだと思うのです。
about 1 month ago
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アタモト『タヌキとキツネ 小さな友達』『〃 冬のおはなし』『〃 ちびっこの冒険』2020年〜2021年 長文に次ぐ長文に困憊して絵本を読むのでした。 タヌキはマイペース。 キツネは好奇心旺盛。 かわいい絵とやさしい文。 ナカヨキコトハウツクシキコトカナ
about 1 month ago
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ミヒャエル・エンデ/田村都志夫[訳]『エンデのメモ帳』2013年 雑文短編百十数点から著者を読み解く一冊です。 エッセンスとしては人間、美、ユーモアが挙げられます。なんだか小林賢太郎と発想法が似ているなあと思いました。具体的には問の立て方です。美について「絵が鑑賞者の内に起こすプロセスが大切」と述べる事からも問を中心とする感があります。 逆に解については煙に巻くように掴みかねます。これはヘーゲルの弁証法に思えます。 「そもそも読者に詩人を理解する義務があるのでしょうか?あるいは詩人に読者が理解できるように書く義務があるのでしょうか?」 やはり読者に精読を通して考えさせたいみたいです。
about 1 month ago
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酒井敏/小木曽哲/山内裕/那須耕介/川上浩司/神川龍馬/対談・山極寿一と越前屋俵太『京大変人講座』2019年 2017年からの公開講座をベースに書籍化。 【地球岩石学】学校では教えてくれない!恐怖の「地球46億史」 【サービス経営学】「お客さまは神さま」ではない! 【法哲学】安心、安全が人類を滅ぼす 【システム工学】人は「不便」じゃないと萌えない 【進化生物学】“単細胞生物”から、進化の極みが見えてくる 【地球物理学】未来はわからないけど、なるようになっている 経営サービス学がきっかけで手にしましたが、どれも興味深く、面白くて、わかりやすいです。これは良いものです。
about 1 month ago
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BSテレ東で『スノーホワイト』という映画を放送していたので観ていたのですが、白雪姫がドイツのグリム童話である事に対してとうにもイングランド的だなあという印象を受けます。 調べてみると米英合作でイギリスロケだったみたいですね。 最後の「女王陛下バンザ〜イ!」なんて如何にも英国的締め括りという感じだったのですが、図上に輝くは菊の御紋型のステンドグラス?! そうするとなんだか象徴としてだけの女王陛下みたいな印象に変わってしまって変な終わり方に思えてきます。
about 1 month ago
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知里幸惠編訳『アイヌ神謡集』1978年 金田一京助による解説によるとアイヌ文学は韻文と散文に分けられるそうです。前者は叙事詩として更に神謡と英雄詞曲に分けられ、神謡は自然神によるユーカラと人格神によるオイナに大別されるとのことです。 現在の視点からするとオチのないような御伽草子ばかりで、註釈の方が興味深い内容でした。 巫女が女性であるのは、高音の方がより遠くまで声が伝わる故というのは(大塚英志も同じ事を述べていた気がします)神聖というよりももっと始原的な理由として面白く思いました。 熊、狼、梟…という序列はロマサガの迷いの森のモチーフとなっていたんだなあと追憶してしまいました。
about 1 month ago
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紺野天龍『錬金術師の消失』2020年 本作のテーマは賢者の石。作り方は、水銀と硫黄(硫化水銀)に神霊を加えて錬金釜で焼き上げるそうです。原材料が分かってもレシピの分からないコカ・コーラのようなものでしょうか? 嵐で孤立した中州にそびえ立つ孤塔(絶海の孤島)、密室連続殺人、首の消えた死体と前作を踏まえるとミステリ要素強強の読み応えでした。 設定は特殊だけれど、振り返ると全部伏線張ってある事に愕然とします。むしろ特殊設定が映える展開かと思いましたね。 シリーズとして続きそうな終わり方でしたが、錬金術ガチ設定で展開するには先の解釈が難しい所かなあ。
about 1 month ago
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紺野天龍『錬金術師の密室』2020年 ドラゴンボールのように死んでも生き返る事が日常的となると不老不死の価値はどれくらいあるのか?と思ってしまう所ですが、錬金術とは魂の解明を通して神の観測を目的とした神学になります。なので理論構築の点で言えばSFかと思いますね。 前半における小説のふりをした錬金術の解説を読むと「ホムンクルスとアンドロイドの違いとは?」とか「サイボーグとリジェネーターだったら?」など思索が去来します。 あと、貴金属の対義語として卑金属と言われると『聖痕のクェイサー』が思い浮かびます。天賦の才が全ての世界ってこわいなあ。 ミステリとして読むと本作は邪道ですね。
about 1 month ago
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#つぶやき養生
神無月です。「な=の」にあたる連体助動詞なので「神の月」になります。そして無は「なにもない」からこそ「すべてがある」とも言い換えられます。 だから「だめな自分を変える!じゃなくてできることを増やす、進化させるって考えると楽しい。」という発想の転換にも繋がるのですね。 そして、これからの冬の季節は汗をかかない事が肝要との事ですが「頭を使ってばかりで体を使わないでいると、心と体のバランスが崩れます。そうすると不安や焦りなどネガティブな感情が渦巻きます。心と体を同調させましょう。」との事です。なるほど思い当たる節があります。 腎臓を労って保湿して過ごそうと思います。
about 1 month ago
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五条紀夫『殺人事件に巻き込まれて走っている場合ではないメロス』2025年 言わずと知れた太宰治の『走れメロス』を題材とした特殊ミステリーです。 古代ギリシャの雑学が満載なのでパロディ以上の面白さがあります。熱海事件を題材としたエピソードには抱腹絶倒です。 メロスの半分は正義の心でできていますが、もう半分はフィジカルなので、正義の鉄槌その人です。つまり脳筋探偵なのです。(笑) 「よし、分かった。事件を解決しようではないか。皆、一列に並べ!犯人はすぐ名乗り出ろ。名乗り出ないのであれば、右から順に一人ずつ殴っていく!」 もう「ちょwwwおまwwww」が最後まで止まらない面白さに(笑)
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今月の読了は16冊で、15冊の購入でした。よき。
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