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読書した本を流していきます フェリシモの色鉛筆のコンセプトに触発されて、 毎日1本づつ色鉛筆から連想を得た短編集を書いてます
#500色鉛筆の乱筆
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フェリシモの500色色鉛筆を揃えた記念 「500色鉛筆の一本一本に想いを馳せる」というテーマでスタートしました 一つの投稿につき1本分テーマとして書き、番号順で進めていきます ただし、初めての取組の散文書きなので、乱筆乱文が多めです ご了承くださいまし 今までの乱筆をまとめて追う形は下のハッシュタグからどうぞ
#500色鉛筆の乱筆
11 months ago
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ここに、アイドル歌手のCDがある 頬を膨らませて伏せ目がちでこっちを向く姿 胡粉のベースにピンクのチークを乗せているのか、遠目からみれば血色が良く、ほんのり透明感がある プルルンと摘みたくなる頬に まるで、幼児がいじらしげに、突っぱねているようである なのに、目鼻立ちがすらっとして、大人の色気混じりの視線がこちらに向く 所謂ゆるふわ系ファッションに 「うわーかわいいー ジャケット買いをするかー」と 発売当時の男性諸君は思ったに違いなかった 昭和アイドル全盛期を過ぎた平成の過渡期の時代に発売されたこのCDは 燦然と輝くアイドルの系譜を今に続くことを伝える貴重な一枚である
#500色鉛筆の乱筆
about 3 hours ago
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某アリーナで行われたアイドルのコンサート 一挙手一投足が観客の目を輝かせる ダンスする衣装にも、彼女達のこだわりを感じる 新曲のために一から織ったという色彩豊かな生地に すらりとしたスタイルが手先足先まで届くように、型紙をとって立体的に造られているそうだ 曲の曲の合間には他愛のない話から 次のセンターが誰か?というバチバチの火花が飛んだり マイクトラブルのハプニングすら一体感をもって乗り切った 乙女心は「かわいい」にくすぐられ、この舞台に立ちたいと夢を見る 現実から切り離され、ただ、「推したい」という欲が渦巻くこの空間が「尊い」と思ってしまうのがオタクなのだった
#500色鉛筆の乱筆
about 17 hours ago
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寝静まった深夜帯 ラジオのチューニングを合わせる ざざっとノイズの向こう側から、音楽と共に声が流れ始めた 「さぁ、今夜も始まりました、〇〇ラィディオ〜♪」 若干のしゃがれ声が特徴の女性DJは、深夜帯のオカルト的な人気を博している番組を一人で取り仕切っている 「今日のトークテーマは「愛してますか?」 『愛は触れ合い』だと、私は思うのよね」 ハスキーボイスにとくんと胸が打つ 徐に番組のメッセージ欄を開く 訥々と、打っては消して、ラジオの向こう側へと伝えようと投稿した 「ラディオネーム××さん」 名前が呼ばれた 「投稿も『触れ合い』ですよ」 囁かれた一言に涙が溢れた
#500色鉛筆の乱筆
2 days ago
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小さい頃、巨大なテディベアは、むぎゅっと手を回して抱くと、全てを受け入れてくれるかのようだった 夢現つになった時に、ふと着ぐるみの「中の人」になったきっかけを思い出していた この愛情のハグをする側になろうと、志してはや何年だろうか 「中の人」は汗だくになりながらも、愛を振り撒く毎日だ 今日も今日とてステージ袖のテントの中で、スタンバイをしている 「さぁ、みんなで、猫さんを呼んでみましょう!」 某熊本のもんにも引けを取らないと自負をする 猫頭を被った瞬間から猫だ 子供がダッシュで寄ってきた むぎゅっと、抱きしめるときゃっきゃっとはしゃぐ ああ、やはり愛はいい
#500色鉛筆の乱筆
2 days ago
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東北に落ち葉が風に舞い、空気が澄んで冷えていく頃 林檎が収穫のピークを迎える 太陽の日にあたって真っ赤に色づき、張りが出て艶で照る 最高級といっても差し支えない出来の林檎が生ったのである 一つ一つ傷が付かぬよう手で摘み取る農家の、出荷への待ち遠しさが溢れている コンテナに納めた後、軽トラに乗って集荷場に運ばれる そして、最新光学式機械によってオートメーションで選別された林檎は箱詰めされる 特に段ボール箱に印字された「特秀」の文字は、最高級品の証であるのだ 後に、林檎は東京の市場に競りに出されていく 薔薇色の林檎には期待が掛けており、農家は送り出すのだ
#500色鉛筆の乱筆
4 days ago
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お中元の桃ゼリーが届いた 桃の果肉が贅沢に大ぶりに入っている 特に桃色というよりは果汁の黄色みが半透明で増してる 見た目は新鮮切り立て桃をそのままゼリーにしました!感がする 「突っついて食べる?」 まじまじとゼリーを見てた妻に問うとこくりと頷いた ガラスの器に、容器の隙間から空気を入れて着地をすると、プルンと弾んだ スプーンで掬って 「はい、あーんして?」 妻は頬を赤らめた 差し出したスプーンの上のゼリーはプルプルと震えている 「あーん」といいながら口を開ける ぱくっ 頬の他にも耳が赤くなっていく 「美味しい?」 もじもじと身を震わせて 「美味しい」とぼそりと呟いた
#500色鉛筆の乱筆
4 days ago
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豪華クルーズ船の旅行 日本国内の湾を3泊4日クルーズする初日 至れり尽くせりの世界を過ごす 宿泊した部屋はスイート 眺望は海が真一文字に見れるほど広い窓の開放感 ベットメイキングも皺一つなくフカフカだ スーツケースを部屋に置いてから、デッキを散策する プールの周りでウェルカムドリンクが振舞われていた 「搾りたてのグァバをどうぞ」 南国に向かうからか、聞き慣れない果物のようだ ウェーターに会釈をしてスッとグラスを取る 飲んでみると、林檎と桃をミックスしたような味がした ジャーンジャーン 出港を合図する銅鑼が鳴り響く 陸地に別れを告げ、 大航海が始まるのである
#500色鉛筆の乱筆
18 days ago
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夏の日差しが和らぐ夕方 ピンポーン インターホンが鳴った 麦わら帽子を被った隣の奥様である 「家庭菜園でできた西瓜、生りすぎて食べきれなくなっちゃった、持っていって頂戴」 「あらまぁ、じゃあこのお菓子食べてって、こっちも食べきれないのよね」 田舎あるあるである 野菜のお裾分けという名の物々交換で一種の経済圏が成り立っていると言っても過言ではない 幼児では両手に抱えきれない爆弾西瓜 齧り付いては真っ赤に顔を汚していた 大人になり、子供の頃は物々交換の品として実家に来ていた西瓜が百貨店で仰々しく包まれて売られていた 5000円の西瓜がそんなに高いんだ?と二度見をした
#500色鉛筆の乱筆
18 days ago
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行きつけの果物屋さんでの買い物 今日は蜜柑を買いに来た 「大将、いい蜜柑あるかい?」 「お高級だが、蜜柑はあるで!」 と大将が奥に引っ込んだ 一寸待つと「クレメンティン」と書かれた段ボールを掲げて出てきた 中を見ると、見慣れた温州みかんよりも小ぶりな品種の蜜柑が個々に包装されていた 「美味いでぇ、これは「隠し玉」や」 すすっと剥いて大将は一房渡してきた 一口食べてみると驚愕である 甘さのパラメーターに全振りした蜜柑だったのだのだ 「・・・大将?!」 「美味いやろ」 したり顔の大将である 「ごっつう高いが、美味いやろ」 掌に包まれたこの神々しい蜜柑は甘美であった
#500色鉛筆の乱筆
22 days ago
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「はい、息を吸いながらー そのまま横ーにのばすー」 マットの上では老若男女様々な人たちが同じ伸びたポーズを取っていた 日曜の公園で行われる、ヨガ教室の一幕である ヨガ講師を勤めてる私 自然に被われた空間でやるヨガが一番好きだからこそ、やってきた さて、ある日のこと、ヨガの講習を終わるときに「マダム」が声をかけてきた 老年の顔の奥に凛とした瞳が聡明さがあるのでマダムと呼ばれている 「これ、おばちゃんからのお裾分け」 瓶につめられたオレンジピールがウインクしながら手渡される 「この前好きって言ってたから」 たわいのない会話を覚えてくれていたマダムに嬉しさを伝えた
#500色鉛筆の乱筆
22 days ago
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今日は百貨店で九州物産展が開かれている 陳列棚には宮崎県産の完熟マンゴー「太陽の卵」が置かれていた 某若いタレントがテレビでマンゴーを猛烈にアピールしていることを思い出す 弾ける笑顔でマンゴー片手にマンゴーの良さを熱弁していた なんでも、完熟したマンゴーは自然に落ちるので受け止めるネットが掛けてあるのだとか ミーハーな俺は、彼女の熱意に推されて、ものの試しにとマンゴーを手に取ってみた 熟れた甘味がもう立ち込めている なんとねっとりとした香りなのだろう それは行ったこともないのにも関わらず南国特有な雰囲気を想起させる まだ味わってもないのだが「太陽の卵」と名は体を表していた
#500色鉛筆の乱筆
22 days ago
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御局様からお中元が届いた 中身はキウイフルーツである 「ふむふむ、キウイは鳥のキウイが先ではなくて、キウイを模してニュージーランドが言い始めたことか」 付属の雑学の冊子を眺めてながらキウイを手にする 「サンゴールドという品種」 切り口は黄色というよりは山吹色に輝いている キウイ一個のサイズ感といい、この山吹色の完熟具合といい、袖の下の山吹色のお菓子に似ている 「ということは、差し詰め、よしなにと小判を送りつけたわけだな」 お中元のキウイを嫌味っぽく見ていた あのお局は陰の支配者として君臨している以上、無碍にはできない はてさて、お返しは何にしようか・・・ 頭を抱え始めた
#500色鉛筆の乱筆
about 1 month ago
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沖縄から離れ小島に渡った時のお話 離島巡りを嗜んでいた俺は定期船を下船をして島の大通りを歩いていた 一つの店に入る 店は簡素で、地元野菜が並べられてる 来客に気がついたのか、奥からノンスリーブのあんまーが出て来た 「めんそーれ、うさがみそーれ」 うちなーぐち(沖縄方言)だろうか? 何を言っているのかさっぱりわからない 混乱している最中、あんまーは笑顔で島バナナを剥いて差し出した 焼けた肌にこの陽気な笑顔では、南国特有のじりついた太陽も嫉妬してしまうだろう 島バナナは本土で見るバナナよりは小太りでずんぐりむっくりである 進めがれるがままに、バナナをはむりと口にした
#500色鉛筆の乱筆
about 1 month ago
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カーテンの隙間から朝日が注ぐ 陽の光で強制的に起こされるから、あまり好きではない 叩き起こされてやや不機嫌ではあるものの、パジャマから着替える バナナ一本を乱雑にミキサーに入れて、牛乳を線まで注ぐ スイッチオン 撹拌されるバナナと牛乳はあっという間にスムージーになる ミキサーの刃を外して、リング状のプラスチックに締め直すと、コップに早替わりだ 飲む時は古式ゆかしい、銭湯スタイルを踏襲する 肩幅に足を広げる 左手は股関節に添えて 右手にはスムージー グビッと一気に腰を逸らしながら喉を通過する 空気を含んでふわふわかつ、滑らかな舌触りで目が覚める 朝は始まったばかり
#500色鉛筆の乱筆
about 2 months ago
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野菜の切り口というものは面白いものである 幼稚園のスタンプ遊びが高じて、息子が自宅でもやりたいと言ってきた なので、うちにある野菜をかき集めて横半分に切り、ペッタンペッタンと捺印をして遊んでいる 蓮根は真ん中に大きな穴と、周りに小さな穴が輪の如く配置されてる 玉ねぎの同心円上に押される 小松菜の軸は薔薇の花の如し ゴーヤは太陽のようだ そして、スタンプにして遊ぶとてちょっとだけ奮発した果物がある スターフルーツである その名のとおり切ると五角形の星になる 息子に新しいスタンプとて渡してみると、判子の押すスピードが上がってきた そして、スタンプされた紙は銀河を形成した
#500色鉛筆の乱筆
about 2 months ago
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コンパで会ったのはマッチョだった 今はライフセーバーをしてるらしい 仕事に行くと小麦色に焼けて、筋肉の陰影を出せれると喜んでいた 妙に引き締まった筋肉が作る笑顔が癖になる 注文した山盛りの唐揚げが届くと 半分にしたレモンが一つ乗ってる 「レモンかけてもいい?」 マッチョが和かに場を問いかける なんとマッチョは、レモンを持ってなかやまきんに君の真似を始めた ボンジョビのイッツマイライフが脳内に流れる 胸筋を動かしながらポージングを決める イッツマイやぁあああああ レモンが握り締められた 握力が強いのか、レモンはカラカラである あれ、この人いい 恋に落ちたかも
#500色鉛筆の乱筆
about 2 months ago
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年始の商店街で「やった!」とこだまする 買い物で集めた券を抽選会のガラガラで回した所、ことりと金の球が出たのだ カランカラーン 「おめでとう、はい、一等賞」 そう渡されたのがギフトカタログだ そして、意気揚々と選んだのはマスクメロンだ あれから、1ヶ月 届いた桐箱を開けると、マスクメロンは白い網タイツのような梱包材で包まれていた しかし、届いてから完熟するまでは2〜3日は待たなければならない 待つほどに甘い匂いが部屋に篭るので、いじらしい 完熟を終えたマスクメロンを食べる日 桐箱から出されたマスクメロンはすでに甘い 包丁で一刀両断する 果汁が勢いよく垂れてしまった
#500色鉛筆の乱筆
about 2 months ago
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今日は鬼嫁が友人とご飯会 羽を伸ばしてねと媚びへつらい、一人の時間を作った 普段ならば、嫁の圧で封印されている酒が好きなだけ呑める! キンキンに冷やしたコップに 密かに隠しておいた10年物のウイスキーを注ぎ、ライムを搾る クイっと一気に煽れば、そこは天国のようだ 「鬼の居ぬ間に洗濯とはこのことよ!」 くるくると視野が歪み、ふらつく ・・・酔いが回って突っ伏したようだ 「あなた?」 そこには、帰宅時間前居ないはずの嫁が仁王立ちで 腕組みをしながら、こちらを凝視していた瞬間だった 背筋がきゅっと凍った その後スライディング土下座を決め、平謝りを繰り返すのであった
#500色鉛筆の乱筆
2 months ago
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思えば遠くにきたものだ 東京から長野の方へ、愛車と共に峠道を走らせる 信号がなく長く走れる道は、都心特有のストレスもなく爽快感がある うねった道を何回か曲がれば、峠の頂上に着いた ここには牧場が出店をしてる穴場中の穴場ソフトクリーム屋がここにはある 今日は空いているかな?と覗いてみる そこには、こんな看板があった 「期間限定、摘みたてブルーベリーソフト」 期間限定?! この言葉には弱い 真っ先にブルーベリーソフトを注文した 薄紫のソフトクリームに、朝獲れブルーベリーが添えられてる おまけにジャムがたらりと垂れていた 走り屋の目的地には美味しい物目当てがあるのだ
#500色鉛筆の乱筆
2 months ago
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真夏のおやつ前 部屋の外から、冷凍庫が空いてるとアラームが鳴った ほんの数cmが閉まってなかったようだ しかし、その隙間からはっきり見えた 冷やしていた今日のおやつのグレープアイスのカップがない 5歳児の犯行だった 遠くから見た犯人は、薄紫のクリームが口の周りにべったりと付いていた にも関わらず「冷やしてあった葡萄のアイスクリーム知らない?」と質問を投げると 「しらなぁーい」の一言を言い放った そこで一計を案じる 虫眼鏡を取り出して、冷蔵庫を調べる 痕跡を辿り、段々と犯人に近づく そして某名探偵のポーズを取る 「犯人は、お前だぁ!」 「ごめんなさい」 犯人は自白した
#500色鉛筆の乱筆
2 months ago
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初めてライチを食べた日の思い出 小学生低学年だった この日は国際デーで給食が豪華だったのを覚えてる ご飯、味噌汁、ベトナム風の野菜炒め そして、その脇に小皿に乗ったライチがあった 冷やされた赤紫の実は、ワイバーンの肌のようで、持った手の感触がごわごわしている 一つ剥いてみると、ぷりっとした小さな白い実と硬そうな種が出てきた 一口でがぶりと齧り付く すると、実から果汁が溢れ出した 張りがあり、水々しい そして、噛めば噛むほどに、甘い甘い果汁は尽きることがない 種を吐き出して、咀嚼に時間をかける しかし、時計を見れば、給食の終了時刻が迫る 惜しんでライチの実を飲み込んだ
#500色鉛筆の乱筆
2 months ago
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湿地帯に生えるクランベリーは「摘む」というよりは「浮いて掬う」がマッチする そんな光景が眼下に広がる ここはカナダ南西部ブリティッシュコロンビア州の一角である クランベリーの畑は熟れると張り巡らされた水路によって草木の背丈まで水没させる 機械によって枝を掻き回すと、ぷかぷかと実だけが浮くのだ まるで真紅の絨毯が水面を漂うかのような収穫が、彼方此方で行われている 浮いた実はバキュームで吸い込まれ、分別ののちに巨大なコンテナへと輸送される 酸っぱいクランベリーは加工されるのが常 クランベリーは工場に出荷されて、ジャムやドライフルーツとして私たちの手に来るのだ
#500色鉛筆の乱筆
2 months ago
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長雨の合間を縫った曇り空の中で、刺々しい枝を避けながらラズベリーを収穫している 熟れている実を引っ張ると、木に繋がってるへた側がすぽっと抜けて、実だけが残るのだ すると、枝の影から黒々と色づいて実ったラズベリーを見つけた 収穫しようとして実を触ると、ほろりと崩れていく 「熟れ過ぎた・・・かも」 と呟いた 熟れたラズベリーの収穫の四苦八苦で手が黒くなっていた 収穫後、熟れたラズベリーに疲れが溜まっていた ええい、まとめちゃえ! 自棄っぱちにミキサーにラズベリーを入れる 黒い名残が無くなるほど、真紅に染まったラズベリージュースができた それは子酸っぱい味がした
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2 months ago
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「なんじゃこりゃ?」 都会のど真ん中で、幻想的なRPGに出てきそうな果物が売っていた 紅い龍の鱗が緑の差し色をして、丸くまとめられたかのようである 値札の「ピタヤ」の括弧の中に、小さく「ドラゴンフルーツ」と追記されてる 龍の鱗に魅せられて、気がつくとすっとレジに向かっていた 帰宅後台所に向かい、一刀両断する 紅の龍の鱗の中に、胡麻を混ぜ込んだ白米がぎゅっと詰め込まれた果肉が姿を見せた 「なんじゃこりゃ」 実を剥いで口に向かわせる 味はあっさり 舌の遠くの方で甘さが呼応している 寧ろ淡白といってもいい ぷちぷちと種が噛むとあたって食感は面白い 龍の実は摩訶不思議だ
#500色鉛筆の乱筆
2 months ago
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チョコレート沼は深い 興味本位に85%のカカオ産地食べ比べセットを食べた時、淵にいた俺は沼へと足を踏み入れた 赤道直下に生えるカカオの豆は、地球をぐるりと囲むように生産地がある 一つ目の南米、エクアドル産 バランスが良く、基準となる味わい 軽めの苦さと、花のような香りが広がる 二つ目のアフリカ、ガーナ産 格調高い香りと苦さがある 我々が馴染みのある「ココア」味に近いかもしれない 三つ目の東南アジア、ベトナム産は新興国 酸味が強め、甘酸っぱさが目立つ 「酸っぱい」という感覚が、チョコレートの中では新鮮だ 他にも沢山ある 余白には書き足りないほどチョコレート沼は深い
#500色鉛筆の乱筆
2 months ago
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学生街の下宿先に、飴が置いてある 近所のおばちゃんの差し入れらしい 味はリコリスである 「あっ、リコリスじゃん、ラッキー」 下宿先の先輩彼女がリコリスの飴を頬張る 俺が訝しげに眺めると 「何で舐めないの?」と先輩はにたにたと笑う それもそのはず リコリスは漢方で配合されている「甘草」を指している つまり、我々日本人には苦〜い薬を嗜むような味覚なのだ 俺は風邪で寝込んでいた時に飲まされた葛根湯を思い出すので、リコリスの飴は苦手だ 先輩はそれを分かっていながら、わざわざ勧めてきた 「このサディスティックめ」 毒付いてもまだにたにた笑う 「美味しいじゃん、ほら、食べなよ」
#500色鉛筆の乱筆
3 months ago
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彼女の家で飲んだアイスの実ワインの衝撃からはや1ヶ月 今夜もまた呑みデートが熱くなってしまって終電が逃してしまった 「今度は俺の家に行くか?」 こくりと頷いた彼女の顔は真っ赤だ 家に着くなり、冷蔵庫に密かに用意したアイスの実とワインを取り出す しかし、アイスの実を手にした時、 「今日はこの気分じゃないー」 と声がかかってきた ほろ酔い彼女は膨れっ面だ 「今日はこの気分ー」 冷蔵庫を漁った彼女は お米と牛乳を鍋にかけ始め一煮立ちさせた お摘みのドライフルーツをかけてミルク粥ができた 「お腹に優しいで」 優しい眼差しは酔っ払った俺に気を遣っていたことを悟っていた
#500色鉛筆の乱筆
3 months ago
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マカロン(正式名称マカロン・パリジャン) メレンゲに、アーモンドの粉をさっくり混ぜ込んで弱火で焼いたお菓子 パステルカラーに焼き上げられたシェルとなって、バタークリームを搾り挟んだら完成 シェルの表面は乾燥しているのにも関わらず、てかっている 一方で、中身を齧ると湿潤なメレンゲとバタークリームがやって来る こんなにも繊細な口当たりなのに 砂糖と卵白とアーモンドのみとシンプルな材料の構成である 材料費用も焼き上げの手間も掛かっており、 一粒一粒が色彩豊かでアレンジもごまんとある 故に、宝石のようと讃えられているマカロン 一輪の薔薇と引けを取らないのも頷ける話である
#500色鉛筆の乱筆
3 months ago
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トポロジー 空間を切り貼りせずに、同一性を保ち、連続変形をする学問 即ち、トポロジーではドーナツとカップはトーラスで同位相であると定義される ・・・なんていう小難しい噺のネタを本で読んでる 3時のおやつのお供だ ドーナツを摘んでいたことを忘れて読み耽っていた 掴んでいるドーナツのまん丸とした穴を覗いてみる コーヒーが入ったカップが置いてある 先程のトポロジーの世界でいう「空間を捏ねて出来るドーナツとカップの変形」に想像に勤しんでいる うーむと唸っていたら「何難しい本読んでるの?」と子供が覗き返していた どうやら考え過ぎていたようである ドーナツは美味しく穴ごと食べた
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3 months ago
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終電を逃したデートから、彼女の自宅に泊まることになった 帰宅途中で彼女はコンビニに寄って行った コンビニから買ってきたのは、アイスの実と500円の安いワイン 自宅で、何をするのかと思いきや、アイスの実をグラスにぶち撒ける そして、並々とワインを注ぎ出した 意外な組み合わせに驚きを隠せない 「飲んでみぃ」 ぐいっと勧められるがままに口をつけて飲むと 冷たいアイスの実が溶けて甘くなったところを、ワインの酸味が舌の上を通り過ぎていく 「言うたやろぉ アイスの実にはこのロゼワインやって」 ほろ酔いながらドヤ顔をする彼女に、改めて面白い女だなと思ったのであった
#500色鉛筆の乱筆
3 months ago
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「お届け物でーす」 いよいよ待ちに待った、 ヨギボーのクッションが届いた 「人を駄目にするクッション」という異名を持つヨギボーのクッション クッションが程よく沈み込んで中のビーズが身体を支えるので、数々の人を駄目にしてきた 腕に抱えきれない程の段ボールを広間で開封してみる ギチギチに詰められたクッションは、空気が含まれたので更に大きく膨らんだ 真っ白なカバーをかけると巨大なマシュマロみたいな見た目になった ばふっ 飛び込んでみる 自重で沈み込んでもフィット感が半端ない ヨギボーに埋もれて、あとは寝るだけである 陽気に当てられて、睡魔が誘う スースースー
#500色鉛筆の乱筆
3 months ago
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都会を生き抜く女の子にとって、最新の流行は常に押さえるものである 地元雑誌やinstagramのトレンドは毎朝チェックする 目抜通りに出来た新しいカフェ 郊外に古民家をリフォームしたお菓子屋さん 煌びやかに流れる情報の取捨選択は欠かせない お眼鏡に適ったお店は身綺麗なスカートと、日焼け防止のサングラスと帽子でお洒落をして出向く サングラスの奥から鋭い眼光で店内をチェックが入る 客層は、20代前半の女子大生がターゲットね コーヒー&チョコレートのセットは仕事の合間のひと時を演出してるのかしら? こうして彼女らは、切っても切れない甘味処の経済圏を廻している
#500色鉛筆の乱筆
3 months ago
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さて、雑貨屋さんにきたぞと コインを入れガチャガチャを回す 大粒の風船ガムがコトンと一粒出てきた 口に放り込んでから、くちゃくちゃ噛んでいく 外に覆われた砂糖のコーティングを丁寧に噛み砕くと、中からガムが粘って出る 唾液と混ざり、体温に温められたガムのコンディションはみるみる良くなる 舌で伸ばしたガムに向かって試しに一息いれる ぷくっと膨らんだガムは呆気なくパチンと割れてしまった 舌でガムを伸ばした時に、薄い生地ムラがでたな 均一に延ばすにもコツがいる ガムを噛みながら口の筋肉をほぐしてっと 今度はどうだ? 膨らんだガムは顔のサイズをゆうに越した まるで気球のようだ
#500色鉛筆の乱筆
3 months ago
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組み飴というものをご存知だろうか? 味や色をつけた飴を棒状に伸ばし、図案を基に積み上げて引き伸ばす すると、太巻きの寿司のように、同じ断面図の柄の飴が大量に出来るのだ 実は組み飴はオーダーメイドで注文ができる 組み飴は職人によって緻密に図案を再現できるので、オリジナルのデザインの飴が大量生産できる ここに、推しの布教のために飴を作るオタクがいた 個包装された推しのマーク飴を、頒布会で配らんとて発注したのだ 両手一杯のキャンディーには、推しのマーク これを配りまくった 後日、SNSの写真からは推しのマークの飴が溢れていた 想定通りだ オタクはほくそ笑んだ
#500色鉛筆の乱筆
3 months ago
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トランポリンが設置されている公園 延々と飛び跳ねては、雲を掴もうとしている子供がいた 時刻は夕方 斜陽になってきていると、空には入道雲がもくもくと大きくなってきた 「これだ、待ち望んでいた雲は!」 手を振って、ぐっとトランポリンに向かって力を込める 反動が更に強まり、子供の神経が研ぎ澄まされる 乾坤一擲の跳躍が今決まった 全ての感覚が脳内に処理を行っているのか、スローモーションとなっていた しかし、入道雲は遠かった 雲に向かって真横に跳んでしまったので、トランポリンから外れて地面に叩きつけられてしまった おかしい、こんなはずではない 激痛が襲い、悔し涙が溢れていた
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3 months ago
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今日は大祖母の齢100歳の誕生日 宗家を中心に一族総出でお祝いをすることになった そして、この地域の盟主でもある大祖母の誕生会は、町ぐるみに繰り広げられことにもなる 大祖母は、長年沢山の人に施しながも叱咤激励をして、沢山の人に愛されている 襖が外れた大広間には、人が大挙した中で大祖母がにこやかに座り 健啖家の大祖母の大好物であるブルーベリーチーズケーキが鎮座してあった 100と象られた蝋燭が刺さって炎が灯っている 蝋燭の火を吹いて消すと、ぽつりと大祖母はこう呟いた 「人生はなぁ、ブルーベリーチーズケーキみたいなものや 酸いも甘いも全てを知り尽くした味やで」
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3 months ago
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猛暑の昼下がり 元気溌剌な丸刈り少年でも暑いものは暑い 滝の如く吹き出す汗がなお暑さを誘う 「ただいま」 家の軒下に駆け込んでへばる 風は熱波となって追いかけてくる 「おかえり、冷たいのあるわよ」 母親が冷凍庫に向かうと、箱から一本の棒を取り出した ガリガリくんのアイスだ 丸刈り少年は目を輝かせると、待ってました!と言わんばかりにアイスに駆け寄る 袋を破り、アイスの棒を握り締める 英雄アーサー王が引き抜いた聖剣エクスカリバーのように、ガリガリくんを恭しく高々と掲げる 振り抜いた軌跡は涼やかで、期待を込めた瞳は一層強く輝く しゃりっ! 冷たく頬張った顔は笑みを湛えた
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名古屋の繁華街の南側には、熱田神宮の原生林が残っている 熱田の杜は古来から聖域になっているので、樹々はそのままに繁っているのだ 夏は葉の木陰から社へと涼しい風が吹き抜けていく 最近では、宮きしめんの売店が整えられて益々の成長が臨まれる 往年の宮の渡しを模した水辺に、ちょこんと座る男女2人 繁茂した樹々からは影が差し伸べられる 何も言わずに隣で座っているだけでも愛おしいと感じているからだろう 熱田神宮は二人が密かにデートを重ねていた場所であった 今は無事に結ばれているので、熱田の功徳のお陰である 木陰の中、逢瀬を重ねたあの頃と変わり変わらずの熱田の杜は佇むのであった
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忘れたいと願う程に、忘れられないほろ苦い思い出 まだ熟れないレモンのように、思春期の恋愛は「ほろ苦い」と形容される 若さゆえに、後生になってから思い返せばほろ苦くなるのではないだろうか 判断を誤っていたとか、 視野が狭くなっていたとか 小っ恥ずかしいことが勇ましいと勘違いしていたとか ほろ苦くなる原因は様々である 思春期の心情の変化するホルモンバランスと性差によってもまた異なる 男性は一途に真っ直ぐに恋をする 女性はゆったりとじわじわ恋をする ただ「恋人」か「友人」か「ただの知り合い」かの定義のグラデーションが、恋のすれ違いが生み、物語を生み出すのではないだろうか?
#500色鉛筆の乱筆
3 months ago
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今日は夏至 一年のうち最も陽が一番長く地上に降り注がれる日なので、各地で祭りが執り行われる 早暁、三重の二見興玉神社では、夫婦岩に太陽が昇ると共に、海に入って身を清める 南中、北欧ではメイポールと呼ばれる、白樺の木を季節の草花で飾り立てたポールを立てて、周りで音楽を奏でて踊り明かす 夕刻、極北では夜でも太陽が昇る白夜が続く 南極の基地ではミッドウインター祭でディナーが振舞われ、グリーティングカードを交換し合う 地球の公転に合わせて夕日がグラデーションを重ねて沈みゆく 赤、橙、黄色とシトラスの弾ける皮の色のようにミルフィーユ状に淡く染まって、来たり来る夏が始まる
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古来メソポタミアの地母神の土偶のように、お胸が大きな女性像は信仰対象になってきた 自身の遺伝子を残す際に、発達した女性の乳房は子を生存できると、本能的に感じるからだ 今でも乳房の大きさは、男性の間では浪漫として語られる ある雑誌には、丁寧に育てられた高級品のメロンのようなおっぱいと形容された女性がいた 無論、雑誌に掲載される女性もプロである ブラジャーを付けた自らの胸を脇で寄せて、柔らかそうな膨らみ出している そして、グラマラスに魅せていた 掲載の煽り文句にはこう書かれてる 「メロメロメロン」 世の中の男性陣はこの一言で本能が燃えてきた 飛ぶように雑誌が売れたそうだ
#500色鉛筆の乱筆
3 months ago
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深夜の帰宅時 最近出来たユニークなジュースの自販機が目に入った 上部の窓越しにはグレープフルーツの果実がそのまま自販機に入ってる 自販機に小銭を入れてみると、グレープフルーツがことりと落ちて、果実を挟んで搾る機構に取り込まれていった まるで怪力なマッチョが掌でグレープフルーツを握り潰したかのようだ 流れ出た果汁は器へと流れ、シートでシーリングされて出てきた ストローで啜ってみる 厚い皮や白く残る房のほろ苦い風味がそのまま出ていた ふと鮮明に蘇ってきた記憶がある お袋がグレープフルーツを搾っていた時に 「僕、頑張るよ」とぐりぐりと搾っていた 「・・・俺も頑張るか」
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4 months ago
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今日梅雨の中休み 晴れ間を縫って果物の卸問屋が営むフルーツパーラーに、彼女とやってきた 旬の果物をそれなりの価格で愉しめるので、意外と女性ウケがいい 「今日のフルーツはネクタリンです」 店員はこう言って、切り分けた果物を持ってきた パッとみて産毛がない、ツルツル、テカテカした真っ赤な桃だ 「桃の亜種みたいだね」 サッとググったままを言った 彼女がフォークで口に運んで、ネクタリンを噛み切った ネクタリンは桃よりも固く、ぷるん、と唇が揺れた サクサク、もぐもぐ 果汁が唇のグリスになって、妙に艶やかな口元になる 「あ、これ酸っぱ甘い」 僕は貴方の唇が酸っぱ甘いです
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4 months ago
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今日は初デート お洒落な喫茶店の苺パフェを食べにきたのだ 注文してきた苺パフェは グラスの面を越して山のように生クリームが冷やして提供されてきた 四方八方にスライスした苺が生クリームで刺さっている グラスの底には滴り落ちたクリームやジャムを受け止めるコーンフレークが敷き詰められていた 彼はクリームソーダだ 黄緑色の弾けたソーダの上にバニラアイスを乗せて、桜桃が添えられている オールドスタイルだな・・・と眺めていると彼と目が合った 黒い瞳の奥に不意に吸い込まれる 胸の早鐘が打っている 「うん?飲んでみる?」 差し出されたクリームソーダを断って、苺パフェを頬張った
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4 months ago
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昭和のレトロなクッキーには、ドレンチェリーと呼ばれるシロップ漬けが乗ってるのをご存知だろうか? 種を抜いた桜桃をシロップで煮ては漬けて、煮ては漬けてを1週間繰り返す そうすると、赤く透き通った宝石のような見た目の桜桃ができる クッキー生地を星型で絞り、輪っかを描く その中心にドレンチェリーを乗せてオーブンで焼くと完成だ クッキーはこんがりというよりは白く焼き上げるので、宝石のブローチのような見た目である 乙女心は擽られる さくりと音を立てて食べる 桜桃はシロップに置き換わってるのでしゃりしゃりと砂糖の塊かのようである 下のクッキーの甘さと相まって、昔懐かしな味である
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4 months ago
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フランス西部、巨大な三角州に位置するボルドーは、古来からワインの生産と交易に栄えている 水捌けの良い日向の土地と、港が近く、運河としての水運に恵まれた場所だ シャトーと呼ばれるワイン生産が特徴で 邸宅ひと区画の葡萄畑から、収穫、醸造、瓶詰めまで、一手に担う シャトーには厳格な格付けがあり各々が切磋琢磨している ボルドーワインを見ていこう シャトー毎に、赤、白、ロゼ、スパークリングと多種多様にある 特に有名なのが複数の葡萄を混合して作られた赤ワイン シャトー毎にブレンドが施されるが、概ね紫色の濃淡が濃く、タンニンが効いた渋くて重厚な味わいが特徴である
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4 months ago
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「クッキーなんか簡単だろ?」 そんな事を口走ったものだから、料理初心者の俺がクッキーを作る羽目になった 傍らでは嫁がにたにた笑いながら腕組みをしている そして、調理を開始すると 謎の用語への叫びが木霊しまくった 「バターは常温に戻してください?!」 「卵の黄色い所だけなのか、勿体無い」 「白っぽくってどの程度?」 「粉をふるう」 「さっくりと?小刻みに混ぜればいいのか?」 生地を30分寝かせる段階で汗が噴き出ている 嫁は単語の意味を教えて頼んでも 「クッキーって簡単でしょ」の一言で噤んでいた 「俺が悪かった、クッキーは難しい」 白旗を上げると嫁は漸く手伝ってくれた
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4 months ago
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ある夏の日、近所のおばちゃんが野菜の差し入れをしてくれた 「美味しいんだって、バターなんちゃらかんちゃら」 ・・・肝心の名称が抜けていた カメラの画像検索でこれが「バターナッツかぼちゃ」と呼ばれ、調理法まで漕ぎ着ける 瓢箪の形に喩えられる南瓜のようだ シンプルに縦に割ると、南瓜の種と綿が出てきた 取り除いて5mm幅の輪切りにすると、天板に薄く並べて170℃のオーブンで20分焼く たったこれだけの調理だった 焼き上がると艶やかな艶が南瓜の表面を覆っていた スライスした南瓜を一口食べる ねっとりと舌に絡みつく 「濃厚」の二文字が頭をよぎる これはバターでありピーナッツだ
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4 months ago
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ドイツ南西部 フランスとの国境沿いにはシュヴァルツヴァルト 即ち「黒い森」が存在している 原生林が密集する「黒い森」は幹に苔が生い茂り、空は針葉樹の尖った葉で隠れ、全体的に鬱蒼としている 故にこの辺境の地では魔女が住むと信じられてきた 未踏とする「黒い森」に住む魔女は神秘的な術を使い、夜中では秘密の儀式を執り行う はたまた、森に踏み入った人を罠で陥れて術の贄にしたともいう 魔女の動向はメルヒェンとして地元で口承で伝えられている さて、「黒い森」の静寂が張り詰める中、魔女にあった場合は如何様にすればいいのか? 答えはその時の魔女のみぞ知る 魔女は異界の住人だから
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4 months ago
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日本三景の松島は東北仙台の北側の海岸線にある 260余の島には万葉集の頃から歌枕に読まれるほどの景勝地 奥の細道では松尾芭蕉が目指した景勝地であり、 対句を利用して技巧的な熱量を込めた文章が残されている 今回は松島の中でも、穴場の双観山に向かう 松島海岸の南に突き出ている岬の丘の頂上には展望台が整備されている 遠くを眺むれば、南の塩釜湾と北の松島湾の双方が望めることができて「双観」の名が付いた 赤々と空を染める時間帯 遠く東の牡鹿半島と金華山から、日の出は昇ってくる 手前の湾の波間や島々が色や影が刻一刻と変化してくる 松島の松は蒼く湾をさし色として映えていた
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4 months ago
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