持っている時には気付かなくて、無駄に放出してしまったりして、それが当然だと思っていた。その火が消えてしまったのがいつだったのかもう思い出せないが、多分ゆっくりと小さくなっていたのだろう。
画面の中で歌う青年が眩く笑う。そこで初めて私が持っていたものに気付く。青年はそれを無邪気に発散している。もう8年も前の動画なのに。これだったのかと。
私の声はもう出なくなり、指は曲がり、背は丸い。歩く事も覚束なく杖をつき、足も遅い。その横を颯爽と通り過ぎる彼は、商店街で買ったコロッケを頬張っている。
ドアノブを回し冷えた部屋に入ると、目を閉じてソファに横になる。冷蔵庫だけが何かを話していた。
28 days ago