肌寒さがしずしずと近づく朝、弟と温かい蜜湯を楽しんでいるところへ躊躇いがちなノックが聞こえた。いらえると、おなじく躊躇いがちな面差しの妹いわく「兄様、お寛ぎ中失礼します。仮面師が参っております。兄君様の仮面の瑕をぜひにも任せていただきたいと」。思わず額に手をやった。しばし考え、首を振る。「いや…このままで構わない」「左様ですか」「ああ、これが今の私であるから。それに」弟が私の膝に乗ってきて、私のひび割れに恭しく口づける。「これが、案外悪くないのだ」「はあ…あまりそれを甘やかさないでくださいまし」「ふ、甘やかされているのは私の方だよ」
29 days ago