【化屋月華堂 in #文学フリマ東京41】 🗓11/23(日) 12:00〜開催 📍東京ビッグサイト 南3-4ホール ✅ブース: あ-48 📕イベント詳細: bunfree.net/event/tokyo41/ 今年のイベント納めも #文学フリマ東京 となりそうです。今回はなんと通路の端っこ席！藍ちゃんがいつもより目立つかも。 新刊はありませんが、無料配布ポストカード集めよう企画「 #縁結葉書 」に参加します。そして最近つくった作品は全部持っていきます。

しゃべる生首、それも今度はちゃんと「生」要素あるやつの話を頑張って書いてみようとして、ふと浮かんだアイデアをたぐっていったら「それって(次の次位に書こうとしている作品)に取り入れたほうがよくないか？」と気づいてしまったので、再びの企画参加はずっと先になりそうです。

しかしwebカタログにあるサークルが3303件って、まあ企業も込みですが、かなり恐ろしいことに。

化屋月華堂は【 #文学フリマ東京 41】に出店します! 🗓11/23(日) 12:00〜開催 📍東京ビッグサイト 南展示棟 ✅ブース: あ-48 (南3-4ホール) 📕イベント詳細: bunfree.net/event/tokyo41/ 📕webカタログ: c.bunfree.net/c/tokyo41/53535 賑やか通り越して混沌の風が吹く会場に風の魔女が登場。暴走令嬢の近未来冒険ファンタジー、ゼロ年代ラノベ的長編、300字掌編集、写真ステッカーなど出します。 新刊はないですがステッカーの新作は間に合ったらいいな。何か東京らしくて権利関係で怒られないようなアイテムを探しています。

#関西万博 閉会式を観ながら作った #こみゃく その目は未来を見ている

息子の手からペアのカードが離れ、夫は両手を床につく。今夜もリビングの真ん中でジョーカーが嗤う。「何故なんだ……地元じゃ負け知らずだったこの俺が……」これ格好つけてるわけじゃなくて前から何度も聞いた話。でもどうせ子供の頃の話、家族や親戚から手加減でもされていたんじゃないかと疑っていたけど、どうやら違うらしい。教室でも連戦連勝だったって一体いつの話なんだか。あれ、そういえば最近似た話を近くで聞いたような。「もう一戦！」「いいけどそろそろ本気出してよ、昔は強かったお父さん？」話半分に聞いていた娘の無敗記録、もしかして対家族に限った話じゃなかったのか。頑張れよアミーゴ。あと子供たちは煽るのやめなさい。

#文学フリマ大阪 参加してきました。 前日に万博会場歩き回って、その疲れを引きずっているのに重い荷物抱えてよく到着できたし、よく居眠りしなかった(危うい瞬間はあった)。 こことXで連投した感想ポストで藍ちゃんの顔を覚えていてくださった方も結構いて嬉しかったです。

化屋月華堂【 #文学フリマ大阪13 】出店! 🗓9/14(日) 12:00〜開催 (入場無料!) 📍インテックス大阪 2号館 ✅ブース: か-47(c.bunfree.net/c/osaka13/48563) 📕イベント詳細: bunfree.net/event/osaka13/ ワナビイをはじめ #文学フリマ大阪 初登場の作品が複数あります。2年の間にいろいろ作っていたんですねえ。 今回は本の新刊はないのですが、ばけステッカーの新作はなんとか間に合ったので持っていきます。

#文学フリマで買った本 ではなくグッズ。 おとといあさって 「無」 藍ちゃんの頭に乗っているアクリルスタンドです。負荷にならない軽さ、何しろ「無」ですから。でもよく見ると愛嬌ある顔が見えてきます。 文学フリマで出会ったのは本当です。次の大阪でも会いに行けます。本当だってば。

#文学フリマで買った本 @hyourock.bsky.social 「変人伯爵の暇つぶし 〜追懐案件〜」 天才を自称する奇妙な人物とその従者が、持ち込まれたお悩み事をさくっと解決。そんな短編なのですが、いったいどんな環境でどう育ったらこんな二人が生成されるのか。まあ伯爵はわからないでもないですがメードさんのほうですよ特に。まだまだ底が知れないもの持ってそうなんですよ、広い樹海の一点だけ望遠鏡で拡大して見ていただけのような気分です。

#文学フリマで買った本 @sayaphotoba.bsky.social 「しましましっぽ へちま」シリーズ 元保護猫のおうち生活を一年ごとにまとめた写真集。何度見てもいつの写真も美しいんですよ、へちまちゃんの毛並みの白さが。やんちゃしてるうちに汚れていきそうなのに。きっと普段からきちんとお手入れしているきれい好きなんでしょう。 表紙を並べてみると子猫時代のレア感が。もちろんおとなも可愛い。

#文学フリマで買った本 街之あかり(次回大阪ち-33)「駄菓子屋のおばちゃんからの手紙　改訂版」 ご自宅の縁側にお店を開いた方のエッセイ。様々な駄菓子と子どもたちが笑顔を広げるほっこりエピソードが盛りだくさん。中には自分が見たことない駄菓子も……これは地元で取り扱いがなかったのか、最近の商品なのか、それとも。 さらに店を開くまでの流れ (主に届出関係)も紹介されているので、何かの参考にもなるかも。 なおブースにはお店の様子を再現したジオラマを飾っていらっしゃいました。次もそうなのかな？

#文学フリマで買った本 @tatsumisn.bsky.social 「いつか、生きていたことを忘れる君へ、星咲く場所で」 バーチャル世界での出会いと別れと、ちょっとした変化。 元ネタのゲームには触れてないのですが、かつて別のMMORPGを遊んだ経験からか、冒険の楽しさと心の痛みをちょっとリアルに感じられました。 そして転機は急に来る。気づきも変化も突然に。

#文学フリマで買った本 ……ではないけど、次の大阪などで買える本。 @yusumimoto.bsky.social 「ネオメロドラマティック」 幻想が半分混ざったような世界で少年少女が因縁の敵を追う。題名だけ見て買い、話(特にアクション)のテンポにあのビートを感じながら読み進め、ある場面で膝を打ちました。 赤い空よりは夜の星空が似合う世界観。

#文学フリマで買った本 @takoyakiitigo.bsky.social 「幻想アジア吸血鬼譚集　夕牲歌」 テーマはタイトルの通り。ゆえに必ず誰かの血が誰かの腹におさまるのだけど、それ以外の点で個性が満開。国も時代も視点も様々な……死の匂い。印象に残ったのは「血潮観音」、背景知りたいのは「羅刹仔」。 表紙も雰囲気いいですよね。アジアのカラーだけがある。最後まで読んだのに、どれがどの話の人なのかを一部特定できてないのは自分の読解力不足でしょう。 なお番外編もあります(画像で藍ちゃんの背後にいるやつ)。反転と流転。また違った読後感がありました。

#文学フリマで買った本 ではないけど、次の大阪などで(webカタログに出てないけど多分)買える？本 たびー/楠みうみ(次回大阪け-43)「ねこもり草子」 やんごとなき家に住まう猫とそのこどもたちが運命に翻弄される物語。飼い主が誰なのか理解した瞬間にいろいろ解像度が上がりました。まあどの時代のどの辺が舞台なのかは表紙からもわかるわけですが…… 心燃える母親の強さは人も猫も一緒かも。

#文学フリマで買った本 へにゃらぽっちぽー「ぽ」 潔いデザインの表紙がどこの会場でも目立つシリーズの一作目。 テレビの取材で購入者が語っていた「このタイトルでシリアスってことはない」は本当にそう。文章を文章として読むタイプの方々はシンプルにたのしめるし、絵や映像のようにとらえるタイプならかなりゆかいな絵面になるはず。 でも、ただ面白おかしいだけでない匂いも、ある。少しだけど。 最近しまなみ海道にできたあのモニュメントとこの表紙をいつか並ばせたい。文字のひと、きっと喜ぶと思うんだ。

#文学フリマで買った本 ……ではないけど、今度の大阪などで買える本。 コハク燈(次回大阪け-10) 「猫アンソロジー　手のひらに猫」 表紙だけでなく内容も登場猫の毛色も多種多様。猫の自由さとやわらかさを感じるカラーイラストを堪能したら、物語の世界を散歩して回ろう。印象に残っているのはボルダリングの話。思い返せば実家の猫にカーテン登ってたやつがいましたが、そこから何か着想できるかっていうと……猫好きの発想もいろいろ。 なおテキレボの猫マップ企画やったときに購入したものです。懐かしいなぁ。

#文学フリマで買った本 @hpjhal.bsky.social 「自由律対話コーディング」 AIをはじめとしたIT技術が今より少しだけ生活の近くにある、そんな感じの話を集めた短編集。ポジティブでもネガティブでもなく冷静な視線を感じます。 かつてVRの研究室にいたからか、研究する人々の思考や試行錯誤や葛藤は人よりリアルめに想像しながら読みました、特に「IFの混ざりもの」。

#文学フリマで買った本 宗谷圭(若竹庵:文学フリマ大阪う-56)「たつのおとしごろ」 辰年にちなんで発行されたという、テーマで集めた短編集。たくさん書いているとこういうまとめ方もできていいですね。「ドラゴン古書店」が好きです。

化屋月華堂は【 #文学フリマ大阪13 】に出店します! 🗓9/14(日) 12:00〜開催 (入場無料!) 📍インテックス大阪 2号館 ✅ブース: か-47 📕イベント詳細: bunfree.net/event/osaka13/ webカタログ: c.bunfree.net/c/osaka13/48... #文学フリマ大阪 での新刊はありませんが、フォトステッカーの新作だけでも出せないかと試行錯誤しています。

#文学フリマで買った本 ……ではないけど、今度の大阪などで買える本。 @kmaana.bsky.social 「さよなら、愛しき私の異形」 出会いと別れ、泣き笑い、好きと恐れ。 でも何かを失う話ではないのです。作中ではぼんやりとしか塗られてない背景の暗闇の部分がもう少し濃かったら、あるいは何か違ってたら、全く違うエンドになっていたのでしょう。 シリーズではないですが、同作者の他の作品やそのあらすじを読む限り、うっすらつながっているか並行世界っぽい感じもあります。

#文学フリマで買った本 @thorsatomi.bsky.social 「のっぺらぼうと天宿りの牙卵」 一筋縄ではいかない世界に抗うバディのはじまり。題名や帯やあらすじの情報だけ持って読んでいくと、手のひらの上でいい感じに転がされます。何度「そう来るか」と思ったことか。 しかし本来はどんな相棒と旅するはずだったんでしょうね。いつかそのあたりも拾われるのでしょうか、それとも見落としただけ？

#文学フリマで買った本 @ukikusado.bsky.social 「メイドちゃん9さい！おとこのこ！」 恩人の家で健気にはたらくちびメイドさんと、その成長を微笑ましく見守る大人たちのお話。 時に物騒なワードはちらつくけど外野の話。すてきなお庭のある家の暮らし、特にいい匂いのしてきそうなお菓子が気になります。あつあつのショートブレッド、どんな風味だろう。 あとやっぱり、ちゃんと男の子なんです。いつか立派な紳士として、あるいは違う形でも、恩返しができるといいですね。

#文学フリマで買った本 @r-aonami.bsky.social 「無名夜行」 画像は01のみですが、続きも出てますし番外(無配とか)もあります。 一人称視点の冒険を観測する立場で語られる一人称の物語。FPSやアバター空間ではなく「未知の世界の調査」が軸なので、舞台の構成も話題の切り口も様々です。 人間探査機となったX氏が感情の起伏をあまり見せないせいか、淡々と話が進むので、深海をゆく旅のような静けさを感じます。異世界だけど。

実はお盆休みというものをよくわかってません。 今日も普通に仕事します。

広島駅から大きな通りに沿って歩く。舗装道路に挟まれた線路や駅が珍しくて何枚も写真を撮った。走ってゆく電車には急な階段のついたレトロな車両も、床が低くて近未来的なデザインの編成もあった。老いも若きも同じ速度で、地元の人や観光客を乗せて街を走る。非番の日は車庫で語らう。顔のついた電車たちの暮らしを勝手に想像していたら、すれ違った二人組の会話が耳に入った。車体の番号から造られた年代がわかるらしい。さっき撮影した車両の番号を検索して、スマホを落としかけた。妄想の内容が一瞬で書き換わった。あの夏の語り部がそこにもいる。閃光も炎も、涙も痛みも、希望も努力も、線路の上から見てきたんだろうか。聞かせてほしい。

故郷という言葉は外に出ていくからこそ意味を持つ。僕の場合は進学がスタート地点だったけど、その重みを知ったのは就職して様々な背景を持っている人たちに出会ってからだ。以来両親や友人には欠かさず年賀状を送って、運よく休みが取れたら顔を出すようにしてきた。あなたがそっちに帰ったと聞いた当初は単純に驚いたと思う。でも理由を知った瞬間に全てが覆った。僕が抱くノスタルジアはなんて軽いものだったのか。また会えたら伝えようと思っていたことがあるのに、どうしてもペンを持った手が震えてしまう。悩んで迷って、ギターに持ち替えたら素直に指先が動いた。手紙に書くはずだったことを歌い始めていた。あなたには届かないと承知で。

今日あなたに渡した花束には前に好きとかいいねとか言ってた種類や色を覚えている限り詰め込みました。もし記憶違いしてて実は微妙とか苦手とかだったやつが入ってたらごめんなさい。花言葉は一切考えてません。誰かが勝手に決めたイメージなんて気にしないでいてほしいから。作ったとき店員さんが一瞬だけ目を丸くしたんで普通やらない組み合わせもあるのかもしれないけど無視しました。あなたには合うと思ったから。この前ちょっとだけ話してくれた悩みについての個人的な意見も込めました。良いところもイマイチなところも、みんなが知ってることもあなた自身気づいてないことも、全部束ねた彩りがあなたなんです。全部抱えて笑ってください。

君はささやくような甘い声で突拍子もないことを言う。たまに、ではなく、いつも。未確認の飛行する物体を見たから探そうと向かう先は公園でもビルの屋上でもなく地下駐車場。あの円盤がゲート通って入るわけないと考えたって意味はない。「ああいうのを隠してる秘密基地はだいたい地下にあるから」そもそもの出会いからして君の思いつきが発端だった。普通の会話がなめらかに斜め上へ駆けていく衝撃にやられ、君は君で何かを思い、付き合ってると断言できない今の曖昧な関係に至る。たとえ君から真面目な愛の言葉が出てきたって続きは予測不能。そのまま受け止めて、もしそれが聞いた通りの意味で言ったとわかっても、抱きしめるくらいにしよう。

この道は何年ぶりに歩いただろう。毎日のように見ていた山の形、鮮やかな夕焼け、走っていく子供達の後ろ姿。夏休みだからランドセルを背負っていない代わりにプールバッグを振り回している。かつての僕もあんなふうに走って、誰かに背中を見守られていたかもしれない。見慣れ過ぎて何も感じてなかった街路の景色は、多少変わったはずなのに、記憶のまま残っているところばかり目についた。どうしてあの頃の僕はあんなにもここから離れたかったんだろう。嫌いなものなんて一つもなかったはずなのに。ビルのガラスに反射した西日から顔を逸らして、足元を見た。白い舗装に落ちる影がとても長いように思えたのは時間帯のせいだけじゃない気がした。

おしゃべりに夢中な同僚達の後ろを静かに通過するつもりがあっさり捕まった。自分を動物に例える話で盛り上がって、仲間内で一巡したから他の人も標的にしようとしたところで遭遇したらしい。その程度は不運に入らない、ここからが大変だとすぐ気づいた。これ答えるか結論が出るまで抜け出せないやつだ。無難に済ませたいのに何も浮かばない。交差点で車を右折させるときと同じタイプの冷や汗をごまかしながら、次々と挙がる意見を大人しく聞いていた。どれも否定しきれない。知らない名前が出たけど小型犬か何かかな、調べたいのに覚えられない。「やっぱりあれよ、羊」「でしゅよね！」やってしまった。しっぽがあったら巻いて逃げ出したいよ。

さっきまで見ていた夢の中で、帰ってきたら家がほとんど壊れていた。周辺の建物全部が外壁の一部だけ残して崩れていて、道をなぞってようやく自分ちの位置を特定できたけど、中がどうなってたか結局わからない。そこで目が覚めたから。天井があるってことは屋根まで無事で、普通ならほっとするところだろうけど、正反対の感想が真っ先に浮かんだ。青空の下で寝たいって話じゃない。これから一日かけてやり過ごさなきゃならない現実のほうが、見た目だけ綺麗な悪夢なんだ。あーあ。汗に濡れたTシャツを雑に脱いだまま投げ捨てる。明けない夜がないように、日が沈むのを待てばまた夢の続きを見られるかもしれないけど、遠すぎて希望とも呼べない。

君と出かける日のために買ったワンピース。君が来るときを意識して新調したランプシェード。君に買ってもらったネックレスと指輪。目についたものから全部段ボール箱に詰めていった。二人で過ごした日々が遠くなったとは思わないけど、今はどうしても手を放したかった。もし理由を聞かれたらお金が必要だったとでも言えばいい。まだ何も変わってなければ気づきもしない可能性あるけど。箱に封をして積み重ねる頃にはすっかり日が高くなっていた。カーテン越しでもじりじりした熱を感じる。流れる汗を腕で拭い、片づいた部屋を見渡した。外の熱気とエアコンの冷気がせめぎ合う窓際のように、頭の中が揺らいでいる。あの感情をまだ言葉にできない。

あの人は頭から足の爪先まで全く隙がなかった。常に整えて綺麗な状態を保っているし、時に新しい色やスタイルを加えても外れがない。それでいて変な目立ち方はしていないから、上司も黙っているし、周囲を仕事に集中させている。そんな姿に少しでも近づきたくてマニキュアをつけた。ブルーとオレンジの境界線が目に入るたびに背筋が伸びる。わけのわからない言葉が飛び交う世界をなんとか渡っていける気がしてくる。鏡を見てしまうと到底及ばないと実感するけど、悪いことの内には入らない。だってあの人が話しかけてくれたから。失敗したと思っていた虹のなりそこないを最初に褒めてくれたから。もうしばらく爪先の配色はこのままにしておこう。

夏休みを迎えた近所の子供達が毎朝パトロールを始めた。自由研究の題材探しが目的と言っていたが、会話の断片を拾った印象ではどこぞの名探偵に憧れてチームを結成したようだ。怪しい猫の出没地点、ポイ捨ての現場写真、アパートからの不思議な鳴き声。なるほど現実の世界も謎に満ちている。彼らの中では解き明かすまでが研究であるらしく、ある日の昼下がり、駐車場の片隅で推理合戦が白熱していた。熱中症の危機を見過ごしては顔見知りである親御さん方に申し訳ないので、涼しい部屋で議論しようと誘った。それから我が家の書斎が探偵団の活動拠点となった。顧問として勉学には大いに協力しよう。どうか彼らが本物の事件に遭遇しませんように。

最初に二人で見た映画はヒロインの思いが成就して結ばれるところで終わっていた。あの続きを観たい、もっと見ていたいと喫茶店で話した覚えがあるけど、今の私はそれに反対だな。きっとあの場面が一番美しくて幸せだったから切り取られたんだ。最近二人でどこかへ出かけたり、君の家に行ったりしたとき、何故か不意にさみしいと感じることがある。まだ君の気持ちを知らない頃の散歩道と何が違うんだろう。私が変わってしまった、で片づけたくない。振り返った君を見上げて気づく。いつもどこか距離を置こうとしていた君が、私をまっすぐに見てくれるようになったんだ。私を夢中にさせたあの横顔をもう見られないなら、いったいどうすればいいの。

青とも碧とも呼べない微妙な色合いの波が打ち寄せる様を写真に収めた。海水浴をしようと出かけたのに、車を停めたら目の前に遊泳禁止の看板が出てたから焦った。君が水着を忘れてきたと言い出したから救われたようなものだ。「見てないで少しは手伝ってよ」楽しそうに砂遊びをする君を見ているだけで充分に幸せなんだけど、せっかくだから付き合うか。防波堤の上からの視線がなければ最高だったろうな。砂の山にトンネルを掘っている君はきっとそんなこと少しも気にしてないのだろう。「来なかったね、サメ」帰り道の車内で唐突な発言に吹き出した。どこまで本気かわからないこと言うのはその辺にしてくれ。別れの時間が惜しくなってしまうから。

買ったばかりの傘を頭上に広げ、どちらからともなく手をつなぐ。足元に目を向けなくても自然と歩幅が揃ってくる。昨日食べたガムの包み紙をポケットの中に入れたままだと思い出したけど、ちょうど手が塞がってしまった。捨てるのは後でいいや。それより家に着いたら何しよう。今日もまあまあ歩いたし、先に麦茶でも淹れようかな。もうお客様じゃないけど気遣いはさせたくない。一息ついてからどうするかは、考える前に君が決めてしまいそうな気がする。「後ろから来る」言われてからモーター音が耳に入った。車が通れるよう道の端に寄ったら、つないだ手がままの二人の体に挟まれた。鼓動が。「あ、」君には包み紙の潰れる音が先に届いたらしい。

実がつき始めた柚子の木、石ころで囲んだ小さな畑、色褪せたホース、割れそうなブロック塀。前からうちの庭は古くさいと思っていたけど、両親は少しも変える気がなさそうだった。今日初めてそれを輝く目で見つめる人が現れた。君は網戸に顔を押しつけるようにして水まきの様子を観察している。興味は畑の作物から隅に建つ手作りの物置、遠くの空の雲にまで及んだ。最近全然見てなかった両親の笑顔をいとも簡単に引き出したのは君だった。潰れたホースから出ている虹に気づいたのも君だった。なんでもない夏休みの一日になるだろうと思っていたのに。額と頬に網目の模様をつけた君が楽しそうに話す今日という日を普通の一言で片づけていいものか。

町から町へ歩いて冒険するゲームの途中でミニゲームが出てきた。物語に関係ないおまけだと思ったから素通りしていたけど、友達は先へ行くのを止めてコインを集めているという。「あれってそんなに面白い？」戯曲に意味のない要素はいらない。でもゲームにはそういうものがあって、時には本編を忘れさせる。「いや全然。だけどこいつをどうにかしないと全クリアできないから」コインを隣の交換所に持っていって初めて出会う名前があって、しかもそれがずっと気になっていた空白のページの正体だってこと、説明なしにはきっと気づきもしなかった。ていうかあれ交換所だったんだ。悪の組織がアイテムを法外な値段で売りつけるショップだと思ってた。

君が唐突にうちを訪ねてきたとき、本格的に夏が来たと実感した。「今度は先に連絡してって言ったよね？」「そうだったっけ」まずはどこへ行こう。今年も新しい遊び場ができたからそこへ案内しようかな。隣を歩く君の笑顔は変わってないけど、何度も口にしていた夢はさらに進化して、そろそろ本当に届きそうだ。「そうだ、前に言ってた話だけど」「あれはもういいや」最後の線香花火を見つめる君は知らない顔をしていた。本当はわかっている。君はずっと空へ飛び立つための助走を練習していたんだ。僕が思い出を拾い集めて本に挟む間に。変わらない現実は知っている。君はこの夏が終わればまた消えてしまうんだ。小綺麗な家を空蝉のように残して。

思えば君と出会うのはいつも雨の日だった。決まって傘をささず、髪も服も濡れているはずなのに何故か全然そう見えない。後から考えれば何かおかしいと思うけど、君を前にすると疑問も違和感も完全に忘れて、君の声を聞くと心が不思議と満たされる。そして雨がやむ前にどこかへ行ってしまう君に名前さえ聞けてない。「やばい、降ってきた」誰かの声を耳にしたら足が動いていた。端末も何も持たず外へ飛び出す。水滴が刻むビートを足音が乱す。予報の通りならせいぜいにわか雨だ、見つけられない可能性もある。それでもわずかな望みにすがって歩道を駆けた。最初に話しかけられたあの階段へ。今日こそは聞きたい。知りたい。ありがとうを言いたい。

この迷宮のようなものから何としても脱出するためにできることは一つ。互いの素性も知らないまま僕たちは手を組んだ。道を遮るのは堅い扉と罠だらけの通路、怪しく光る機械、意味ありげな記号の羅列が刻まれた板。鍵が揃った矢先に離れた仕掛けが仲間を分断した。暗号なら任せろと立候補した君はそれきり一言も発してない。心配している間に手元の端末がタイムリミットを警告した。「これ、おかしくないか？」横から取り上げた板が垂直に回って視点を変える。悲鳴の三秒後に解読されたコードを頭に叩き込んで、僕たちは走った。追跡者の足音が迫る。緊張と高揚が全身を駆け巡る。まだ間に合う。予想通りならこの先でみんなと合流できる、そして。

駅前の噴水のところに浮き輪をつけたぬいぐるみが座っていた。こっちを向いてもないのに突然背中を向けて逃げ出したので、追い風に言われるまま後をつけた。路上で叫ぶ人の隣にはギターをかじる人。下りるときには振り返らないでと強調する階段のポスター。通路の両脇で食品サンプルの群れが歌う。フクロウが踊る。魚が走る。傘がリズムを刻んで靴下を炒めている。さっきの子は時計の前でぷかりと浮いていた。あら、こんなところにいて、約束のバスには間に合うのかしら。顔を上げたら噴水の前でびしょ濡れの鞄を抱えていた。そうだ、さっきまでここの地下に潜ってぐるぐる回って。その前は？なんだかどうでもよくなってきた。涼んでから帰ろう。

ずっと前に君と来た海岸を今日は一人で歩いている。恋が減点方式だとは存じ上げなかった。それはどこから数えられ、いつ限界を下回ったのか、教えてもらえないのが普通らしい。知っているのは僕なりの努力と、君の不満が牙を剥いたときには手遅れだったことだけ。喧嘩別れと聞いていろんな人が余計なことを教えてくれた。実は僕にいろいろ期待していたらしい。口やメッセージでは何も要求してこなかったのに。考えるほど嫌気がさすけど、そのたび頭の隅に浮かぶのは同じ日の朝なんだ。覚えのある場所で足が止まった。君の足に噛みついたガラスの破片はもうない。当たり前か。あの頃よりずっと綺麗に掃除された砂浜を見渡して、静かに踵を返した。

祭りのかき氷なんて何味でもどうせ大差ない。僕らがその屋台に寄ったのは目についたから。君が選んだそれはそもそも何の味なのか。青くなった舌を突き出して自撮りする姿が楽しそうだから口は挟まないけど。「ちょっと寄り道していい？」通りを一往復して混雑から抜け出した帰り道、君はただの色水が入ったカップをまだ持っていた。いっそ飲み干してしまえと言いかけて踏みとどまった。君はいつも言う。意味ない行動だと決めつけないでほしい。「あった、これだよ」ある店の軒先に吊るされた金魚の提灯を指してから、手前にカップをかざしてみせた。スマホの画面が青く染まる。すぐ転送されてきた画像を何度も見返す日が来るなんて思わなかった。

クローゼットの蝶番が壊れたことを伝えたら、週末に部品を買いに行こうと言われた。自力で直すって発想をすぐには飲み込めなかった。ひとりでいた頃だったら検索してどこかの業者に電話でもしてたんだろうな。いざそのときになったら案外楽しかった。ホームセンターで関係ない棚を見てあれこれ話しながら歩くのも、壊れた扉を支えながら工具を受け渡すのも。「お疲れ様」冷たい麦茶で乾杯して、ふと窓の外を見た。二匹の蝶がもつれるように飛んでいる。ここに来るまでぼんやり持っていた「ふたりで暮らす」イメージはちょうどあんな感じだった。現実はもっと地べたに近いけど、触れると暖かいし、適度に休みながら寄り添っている。悪くはないよ。

「私はみんなのこと応援してるから」言葉自体に偽りはなくて、配信の宣伝を拡散してくれたりライヴに友達連れてきたり、間違いなく俺らの支えになる行動をいつも起こしてくれた。でもいつだったかな、隠してる本音か何かあるんじゃないかって感じたわけ。最初は根拠ないし黙ってた。中身がなんとなく見えてきてから、どうやって背中を押すか、そればかり考えてた。やっぱり直接言うのが一番か。どうせなら突風くらい勢いをつけたい。「お前もボーカルやってみないか？」「はい？」意味を説明しろと詰められて結局ぐだぐだになった。でも舞台のセンターに立ったお前はあっという間に俺らより高いステージへ一人駆け上がっていった。突風のように。

送った写真にもメッセージにも反応がない。元から即返信は期待してなかったけど、既読さえつかないし、昨日から目撃情報ゼロだし。一体どこで何をしてるの。思えば全部言われるのが先だった。行こうも会いたいも好きも。その頃聞いたのはクラゲみたいなやつって意見だったけど、実際接して感じた、むしろ風船だよ。地表をぷかぷか漂ってるときに興味を持ってしまったのがいけなかった。風が吹けば一瞬で飛び出していく青空の彼方。もっと早く気づいていれば紐を結ぶ時間くらいはあったはずなのに。まあ流されていたのはこっちの方かもしれないから、直接文句を言うのは違う気がする。どうするかは風が止まって落ちてきたときにでも考えようかな。