「あれは土人のことです…」 これはアガサ・クリスティのミステリー小説「そして誰もいなくなった」(“Ten Little Niggers”,1939. ハヤカワミステリー, 1975年初版, 清水俊二訳)に出てくる台詞。この小説は傑作だが、black peopleに対する人種差別が色濃く滲む。1930年代のイギリス社会に漂う強烈な差別意識を写し取ってしまったために、今、読む者に言いようのない嫌悪感を抱かせる。彼女の他の作品にも似た差別意識はしばしば顔を出す。メイドなど使用人に対する差別意識、植民地で生まれ暮らした人への差別意識。上流階級、名門、名士以外の人を蔑む気風。読んでいてツラくなる。
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