電話は一家に一台、廊下や居間に鎮座する黒い固定電話だけだった。友人に電話をかけると、まずお父さんやお母さんが出ることが多く、「〇〇さんのお宅ですか、△△と申しますが□□さんはいらっしゃいますか」と、子供ながらに丁寧な言葉遣いを求められた。長電話をしていると「いつまで話してるんだ」と家族に怒鳴られ、受話器を持ったまま廊下の隅に縮こまった。好きな子に電話するときは家族に聞かれないよう声を潜め、心臓をバクバクさせながらダイヤルを回した。あのドキドキは、メッセージを送るだけで済む今の時代にはもう存在しない。
23 days ago