始めに何も無く、今後も何も無い。 家財を捨て、愛する人を捨て、信用も健康も信仰も全てを捨てねば何も無い苦しみを知ることなどできません。 何も無い苦しみを知らねば、全てを分け隔てなく観ることなどできません。 全てが手元にあったのです。しかしそれを知らなかったのです。 無知ゆえに、無知であったことすらも知らなかったのです。 思い返せばこの眼は、光が見えぬ恐怖を知るための眼。 この口は、心を交わせぬ苦しみを知るための口。 この手は、不自由という怒りを知るための手。 この欲は、失う絶望を知るための欲望。 「無は苦しみではない。無は無である」 この投稿を以てここを去ります。合掌。

本当はどうあっても良いのだ。 自分さえそれを認めていれば。

良い事、悪い事。 それはそれでしかないんだよ。 それを裁き、誉めそやしたり責め立てたりする心が恐れを生んでいるだけ。 全てはただあるだけ。 裁く心とは、常に法廷に立つ被告であり告訴人のようだ。 その間にも赦す心は自由の世界にくつろいでいる。 手放してごらん。それがあなたの心を恐れから解放する。

太陽は何ひとつ退けず、天をまかり通る。 ひとつの不平も無く、ただ己の熱を与え続ける。 風は広い草原を覆い、狭い岩山を走る。 望まれるままに、相応しい振る舞いで。 雲は何ひとつ拒絶せずに受け容れ、大空に広がる。 水を、熱を、ただひたすらに引き受ける。その時が来るまで。 水は眼を閉じる。 空からただ落ち、なすがままに山を地面をくぐり抜け、川から海へと注ぐために。 海はわらう。海は荒れる。 ただ、ただ、おもうさま。 不自由なものは何ひとつ無い。 足りないものは何ひとつ無い。 皆あるがまま。

批判はどこにも存在しない虚無から生まれる。 個が増大し、積み上がり、膨らみ、飽和することで薄まる個の存在感が生み出す負の力だ。 ゆえに批判もまた自然に生じる力。 だから批判を否定し抑圧するのは、更に負の力を加え、苦しみを大きくする。 批判は、わたしたち人類が個として歩み出した時に背負った宿命であり原罪なのだ。寂しさなのだ。一人ひとりの苦しみなんだ…。 それは個という人間ではなく、わたしたち人類が受け入れてゆくべき、大いなる悲しみなのだ。 悲しみを歓びとしよう。 分かち合うことがその道となる。必ず。

ただの意見の食い違いも、正しさを奪い合えば憎しみという暗い穴が空いてしまう。 譲り合い、与え合えばそこから温かい光が湧き出す泉となる。 全てはただあるもの。 そこから何かを奪う事が失う事である。 だから与えよう。与える事は無限なのだ…

人は何かを批判しているとき、自分を見失っている。 自分以外の役柄について、監督のように振る舞ってしまう時がある。 つい夢中になり過ぎてしまうからね。 そんなときがあってもいい。気づいた時に、舞台へと戻ろう。 わたしたちは、この世で「自分」という役柄を演じる役者だから。 よそ見をせずに、粛々と「自分」を演じて行けば、実はわたしたちが演じるのは自由で軽やかで、好奇心と冒険心、愛と友情に溢れたドラマチックな物語なんだと分かるよ。

誰と対話をしているのか？ 誰としようと何としようと、全ては自己との対話に他ならない。 それが人でも昆虫でも石ころでも海でも宇宙でも、どんな言葉、感情、風景、感覚で交流しようと、心の入り口に解釈という門番が居る以上、全てが自己との対話である。 何を見、何を聴き、何を知るのか？ 実る稲穂を見ても、風の音を聴いても、空を見上げても、常に何かを学ぶ。 それは自然との対話。言葉を超えた存在との対話。 さあ、魂の会話をしよう。 内なるものの声を聴こう。 沈黙を聴き、静寂の中の揺らぎを聴こう。 自己との対話を終え、解釈を超えた存在との対話を始めよう。

ゆっくりと待つといい。 変容はすぐには起こらず、それには必要な時間、必要な速度がある。 時間が無い？ それもいい。もしも時間切れで去る事になったなら、それはそれで受け容れてしまえばいい。 思い通りに行かないという事を超えて、それそのものが全て予定通りだったと知ってしまえば、それもいい。 全ての結果が、全てあるべき場所に収まる。ただそれだけだ。 「焦り」という一人相撲から自己を解放してあげるといい。 全ての人々が安らぎと落ち着きの中にあって、自由で伸びやかに生きて行ける。必ず。

真の敵は何処にも存在しない。 全てはあるがままで、あるがままという事は全てがひとつの調和を示しているという事。 調和は全てのものが役割を果たし、均衡しているから起こる。 動くものが動き、動かざるものが動かない。 意識するしないではなく、自然にピースが嵌まるだけ。 反発さえも正しい場所へと導く過程でしか無い。 ゆえに、全ては互いに自由であり、それがそのまま味方であり、敵であり、それぞれが役割を果たし、分け合い協力している間柄だという事だよ。 真の敵は何処にもいない。全ては幻だよ。

足りないからと求めるよりも、好きなものを問うてみよう。 好きだからこそ求めてみよう。 いつの間にか足りないものも消えているよ。

自分を定義して何かの枠に当て嵌めてゆくよりも、自分でありながら自分を超えたものになろう。 それは過去の自分と勝負したり上回ったりする事ではなく、過去も未来も呑み込み、好きな自分も嫌いな自分も全てを包含する「大きな自分」になる事。長い時間の中にバラバラに分断された小さな自己を大きなひとつに再びまとめ上げる事なんだ。 思い込みや、観念、定義から解放されて自由になった自分。 心の闇を差別したり恐れることがなかった頃の自分。 そう、遠い過去に置き忘れてきた、本当の自分だよ。

変化は部分ではなく全体で起こっている。 些細な変化は、見えざる大きなうねりの波打ち際に起こる。 その渚の泡を追っても、消えてはまた生じるだけ。 無数の泡を追うのに忙しくて、くたびれてしまうよ。 もっと全体を観るのがいい。 もっと大らかに観るといい。 そのために「感じる」能力が備わっているのだから。 力を抜いて。素直な好奇心があればいい。

人と言葉 出逢いはタイミング。 響いたり、輝いたり、気にも留めなかったり、苦しみになる時もある。 出逢いは一期一会。 どんなに素晴らしい出逢いも、次も素晴らしい邂逅だとは限らない。 苦しい出逢いがあっても、次は救いかも知れない。 出逢いは羅針盤。 心は人生という海原にある灯台の光。その光がぐるぐると彷徨っているなら、出逢いは照らすべき方向を教えてくれるだろう。時には確認するだけで終わる事もあるし、邪魔だと感じる事もある。 出逢いとは自分との出逢い。 それはまさに自己と向き合う時間。そこに何を観るのかは自分次第。

何もできないことは無駄では無いよ。 「何もしたくない」は怠惰ではなく選択。それは努力、それは精進。 そこに気づいていれば、自分を否定する事がない。 何もしないときは何もしない。 それは心が「何もしない」という選択をしているからで、もし心が全会一致で「するべき時だ」と判断したら「何もしない」や「何もしたくない」という選択自体が浮かんで来ないのだから。 「何もしない」は無ではなく「選択」だよ。 全ては心が選ぶまま。だから疑わず、裁かず、罰せず、恐れずに委ねよう。 大丈夫、この地上の全ての生物がそうやって見事に自分を生きている。

正しさに力が入り過ぎているなら、間違うことにも精を出してみる。 好きばっかりじゃ味がしなくなるから、時々嫌いなものも食べてみる。 そうしているうちに力が抜けて、心は本来の輝きを取り戻し、繊細で伸びやか、豊かで大らかに育ってゆく。 自由に生きるといいよ。

力を抜くって、それはどうにもならない事をどうにかしようとしない事だよ。

言葉や態度に温度は無いんだな。 それでもぬくもりがあるんだな。 それは言葉の奥から湧いて来るんだな。 それは態度の背後から差す光なんだな。 それをある人は慈悲と呼ぶ。 それをわたしは存在と呼ぶ。 わたしたちのほんとうのすがた。

日陰はひんやりと心地よく、日なたはまだまだジリジリと暑い。 強い風。吹き抜ける草の匂い。秋の深まりを感じる香り。 静けさ。空高く踏切の音。何もかもが遠い。 くっきりとした陰影。光と影。雲ひとつない空。半袖では寒く、コートでは暑い。 今が潮の変わり目なんだね。 秋に感じる哀愁は、去ってゆくものに対する感謝と、迎えるものに対する期待。 まだ残る温もりを惜しむ心と、ワクワクする心。

人は酔うために飲む。人は話すために話す。 飲み過ぎた。話し過ぎた。後悔するかい？ それもいいじゃない。自由にできた瞬間があった事、それが尊い。 もっと自由にやるのがいい。この世は自由な「遊び場」なのだから。

常に当事者でありなさい。 ただ傍観者でありなさい。

「わたし」も「あなた」も、憎しみも怒りも、喪失の悲しみも苦しみも、全てがありのままに、あるように輝き、あるべき場所に収まり、あるがままになる。 それらは全てが感謝と歓びとなる。安心となる。自分と、世界の全てがそれそのものに変容する。 全ては受容によって変容する。 そしてどれだけ変容しても、わたしたちはひとつ。本質は何ひとつ変わらない。それを体験した時、何もかもが消える。

自然の理の中で生きてゆく。 遠くの空でカラスの鳴き声。日陰の涼しさ。 自然に溶け込む一体感。自分の個性もわがままも、この地球の中に風化して埋没してゆくことに歓びを感じて。 何もかも許そう。受け入れよう。 わたしたちは変わってゆく。 時にはなりたくないものにもなる時がある。 でも大丈夫、それが自然。あるがまま。 なりたくないものの中にこそ、答えが隠されているという声の無い導き。

風になろう。チリになろう。 吹けば飛び、飛べば散る。そんなものになろう。 大丈夫だよ、散っても消えるわけじゃない。 形は無くなるけれど、どこにでも在るものになるだけだよ。 軽く、自由になろう。心配ないよ。

それでもああ、苦しみは起こる。 仕方がないよね。 そういう時は、もう諦めて大地に横たわる。 全てを天に委ね、明け渡し、煮るなり焼くなり、好きにしてもらう。 それがいい。

結果は追うものではないよ、ついてくるものだよ。 結果は尊いものだけど、自己否定の材料じゃないよ。 結果は部分。あなたの一部。全ては無垢。

誰しもが、自分の思惑を追うように他人の視線を追う。 他人の思惑を追うようでいて自分の視線で追う。 他人の視線を追う事が悪いというのではないよ。 「自分」と「他人」は役割は違うが、本質的に同じものだという事だよ。役割が起こす錯覚だということに気づくことだ。自分の役割から見えるものしか見えない。 ひと繋がりのものを分けて追う事が、拒絶や分裂、迷いを生んでいるというだけなんだよ。 わたしたちはひとつだ。 意識してもしなくても、また理解しようとしまいが、自分をただ生きる事が──ただ存在している事が、一体性の中での役割を完全に果たしているという事なんだよ。 誰も、何ひとつ間違ってはいないんだよ。

何者でもなく、ただひたすらに自分を生きよう。 真剣に興じよう、自分という演目を。

心地よい風が追い越してゆく。 枯れた草の匂い。乾いた音。 広い空。黒い青。遥かな天空。 夏の残り香を冷たくぬるい風がさらってゆく。 人の中で過ごす。 人の中で生きる。 人の時間を生きる。 ヒトとして生まれ、生きている。

空の高さに季節のめぐりを観る。

自分を否定しないでいよう。それは自分の思想や行動を無理に肯定したり、過剰に自信を持ったりすることではなく、ただありのままを受け入れること。 自分という自然な存在が生み出したものは雨や風のようなものだと認めて、それを裁こうとしたり支配しようとしないことだ。 ただあるがままに受け入れる。 その眼はそのまま他人や世界へ向けた時、それを裁こうとしたり批判しようとしたりしない「ありのまま」を観る眼になる。 大らかな受容の心は自分も他人も世界をも区別せずに受け入れる慈しみの心となる。 自分を否定しない心は、自分だけでなく他人も世界も何ひとつ退けず、それらを超越するのだ。

人を優しく包む心は、自分を優しく包む心。 まずは自分を満たすこと、存在そのものを慈しみ、受け入れることだ…。 自分の行いや考えを一切を否定せず、小さな赤ちゃんを見守るように慈愛に溢れた眼で自分を受け入れ、優しく導くのがいい。 慈しみは自由の心だ。自由な心は自分や他人を区別しない。だからこそ、自己への信頼がそのまま他への信頼となり、世界への信頼となり、存在そのものへの信頼へと辿り着く。自分も他人も世界も何もかも、全てこれで良いという心の深い安寧へとつながるのだ。

今すぐに何かに変わろうと試みることは、自分から何かを奪い、思い通りにしようとしていることだよ。 何もしなくても大丈夫。 機が満ちれば自然にその時は来る。 待つ。それが自分と世界を信頼するという事だ。 その人にはその人の時があり、変わるべき時が来れば自然に何かに変わる。早い遅いは無く、ただ潮目だけがある。 いよいよその時が来たなら変化を恐れてはいけない。それが思い通りの変化でなくとも、思い切って流れに任せて飛び込むんだ。自己の変容への信頼が試されている。 新しい自分を受け入れよう。大丈夫、心配ない。本当だよ。

今日の雨を歓ぼう。 今日の痛みを味わおう。 今日の不幸を楽しもう。 今日という一度きりの友人。 きみとの時間を大切にする。

心を執着から解き放ち、青空のように澄まそう。 執着を持つのは悪いことではなく、自然なこと。執着している心に気づいてさえいれば囚われることは無い。 心の「在るがまま」を何ひとつ否定せず、退けず、為すがままに自然に成す。 そこに作為は存在せず、ゆえに何の抵抗もなくただ変化だけが起こる。 もし作為があるならば、それは「抵抗」となって、ありとあらゆる場面を思い通りにしようとする執着となり、知らずにあなたを苦しめる。　 思い通りしようしている心に気づき、理解してあげる。そんな心を受け入れ、赦す。 そうすればもはや苦しみという暗雲はその力を失い、青空に在るただの雲になるだろう。

苦しみとは、言葉を持たぬ心の「ことば」。 心は苦しみを通じて意識に何かを伝えている。 苦しみから救い出してくれるものは誰かではなく、心の訴えを聞き入れることが出来る自分だけだ。 心を澄まし、武装を解き捨て、自分自身に素直になって問いかけてみよう。 その無垢の問いだけが苦しみに耳を傾け、理解し、受容し、克服し、赦すのである。

感謝とは、特別な感情ではなく、空気のようなもの。心の足場となる大地のようなものかも知れない。 朝夕に描かれる克明な空の明暗に隔たりの美を見、何気ないそよ風の奏でる妙なる調べに感動する。 口にした果実の香りに眼を細め、その甘みに酔いしれる。 天鵞絨(びろうど)の肌触り、誰かと交わした握手。言葉の力。 毎日いつでも感じているささやかな「感動」。それが感謝なのだと気づいているだろうか。わたしたちは日々、意識しない間にも、身体は、細胞たちは、自分を構成するあらゆるものたちは感謝を返して、互いに満たし合いながら生きている。 「生きる」って、感謝なんだ。

「もっと努力をしなければ」と感じた時に苦しみがあれば、それは自分から奪っている。反対に楽しみがあれば、自分を満たしている。 とても単純で、明白な「しるし」だよ。 奪わず、満たす。満たして溢れるままに与える。誰にでも。 稲が水を満たす。光を満たし、大地の力を満たす。そして稲穂が満たされ、ヒトもその満ち溢れるものをいただく。これが自然の法則なんだね。

頭では掴めぬままに季節は深まる。 カレンダーと温度計を眺めていては、めぐりの気配はどこにも見つけ出せない。 知らぬ間に路傍(ろぼう)に咲く花までも季節を知るのなら、同じように眼を閉じ、口を閉じ、耳を閉じれば、知る事そのものを感じられよう。 花を見て、心から愛でよう。 色、香り、音、どうしてここに咲くのか、ありのままを感じよう。大地に根を張り、秋の涼風にさらされ、ただ何ものも退けずにそこに咲こう。そこにある全てがあるがままに在る。 そのとき、あなたは花になる。大地になり、大気になり、地球になる。 そうして知る。わたしたちが繋がるひとつの存在であることを。

何か物足りなかったり、少しだけ現状に不満でモヤモヤしていると感じるなら、思い切って誰かのために考え、動き、出し尽くして自分を差し出してみよう。 「何か物足りない」は、足りないのではなく、有り余っているから。出し尽くせばまた湧いてくる無限の力だ。 大切に育てて行こう。

自由であること。 高尚なものである必要はない。 卑屈になる必要もない。 そのようなものを超えて、ただあるがままに在るものになれ。 善人であって、悪人でもあればよい。 賢くありたいと望むのも良し、愚かでありたいと望むのも良い。 自ら選んだまま、そうあることだ。 自由とは全てを包含するもの。 それは自由という名の束縛ではない。 解放という名の抑圧ではない。 自由とは思想信条、一貫性、侮り、好悪(こうお)、それらを全て超越したところにある「無」であり、それらを全て包容した「無限」である。 有ろうと無かろうと、何も変わらぬ有り様、あるがままの姿。それが誰もが持つ本来の自由であるのだ。

それぞれの衝動があり、その組み合わせで現象がある。 ゆえに原因は必然であり、結果は偶然と言える。 だが原因という必然を生み出す要素は偶然であり、どちらが先とは言えない。 何となれば、偶然と必然は同じものの側面であり、分けて捉えることが迷いだからである。 同じように人生の事柄を偶然と捉えるか必然と捉えるか、また誰の責任にするのかなど、分別をいたずらに思考することが迷いを生んでいる。 怒りも、苦しみも。もちろん歓びや楽しみも。 だが本質は、どれもただしっかりと味わい、それに囚われない、そのシンプルさこそが大切なのだ。

自己の変容は自ずから起こる。素晴らしい出逢いや、誰かの言葉や指摘によって起こるわけではない。自らの内奥より湧き起こる衝動により、自ら変容する。 もし自分が変わったのなら、それは自ら願ったからであり、変わらないのであれば願っていないから。 つまり変わらない自分が居るなら、変わる必要が無いという事であり、焦る事なんて無いということ。

自己を生きるということは、自分に固執して生きることではなく、自分という役割を演じ切るということ。 そういう眼で世の中を見渡すと、自分以外の全ての人も動物も物質も世界も、それぞれ個という役割を必死で演じる共演者であり、みな同じ仲間だと気づく。 そして歓びも快楽も楽しみも、憎しみも悲しみも痛みも苦しみも、全て自分という役割を演じているからこそ感じることができる特別な体験なのだということにも。

思い通りに行かない？ 大丈夫、それがあるがまま。 思い通りでなくとも、それで予定通り。

自分自身の行いや考えを裁き責める心は、他人のそれを裁き責める心と同じものである。 ゆえに自身の心をよく観察し、他人の言動に反発したり批判的に見ている心に気づくことが、心が自らをどう見ているのかを知る手掛かりになる。 他人の思惑を追いかけ、実際には存在しない自分の「評価」を妄想する。その幻に囚われ苛まれる時、人は病に堕ちる。 それは正に自らが自らを傷つけ、裁き、責めたてている悪夢だ。 恐れてはいけない。心配ない。それはただの幻だ。全部幻だよ。自己批判が生み出す虚構だ。 眼を開いてごらん。その物語に登場する誰かも自分も全部、実体の無いただの妄想だ。何も起こっていない、ありもしないことだよ。

本当の望み、真の望みについて考えたことはあるだろうか。 それが自分の望みだけを叶えてゆく先には無い事には気づいているだろうか。 ただ自らの望みを追いかけるだけではエゴになる。 ただ他人の望みを叶えているだけでは抑圧になる。 だから自らの望みによって、他人の望みを叶えてゆくのだ。 その先に見えて来るものがある。 なぜ自らの望みが必要なのか？ なぜ他人の望みが必要なのか？ 望みとは衝動。衝動とは存在の鼓動。 それは本質的に自他の別の無いひとつのもの。 衝動はわたしたち──いや、世界を、宇宙をめぐる変化の力なのだ。

負けるのが嫌なら、もう負けるのを辞めてしまえばいいよ。とても簡単だ。勝つのをやめてしまえばいい。 それは勝負から降りることではなく、執着から降りること。手放すこと。 執着がある限り勝ち負けは続く。 勝ち負けを手放し、明け渡し、ただ柳のように風に吹かれてなびき、強く揺られてしなる、そういう自然なものになろう。 あなた「らしさ」にすら拘らず、囚われず、ただあるがままであろう。 ありのまま、なすがまま。雲も風も、水と空気の自然な姿。人も同じく自ら然る(形を変える)。心配ない、大丈夫。

終わりそのものが苦しみを運ぶわけではなく、終わりをどう受け止めるかが苦しみを生んでいる。 終わりを拒絶するから苦しい。終わりが消滅だと思うから悲しい。 終わりは、始まりから続くひとつのありよう。始まりと終わりは変化という「大きな不変」の一部。無常というひとつの姿の本質。 誰も始まりからは逃れられないように、誰も終わりからは離れることはできない。 離れたつもりでも、ただ近づいているだけだ。 終わりの姿を昧(くら)ます事なく観るといい。 終わりは空虚な喪失ではなく、新たな始まりであり、調和と献身の環(たまき)だと知るだろうから。

自らを祝福するものは祝福され、世界を祝福する。 祝福──それは自分自身を嫌う心や批判する心、拒絶する心も、全てが自分自身の心であると認め、優しく抱擁し、裁かずに赦し、包含して受容すること。 自身という存在を真の意味で理解し、信頼し、慈しむこと。生まれてこの方、バラバラだった自己への回帰を果たすこと。 生きることは長い祈りである。生まれてから死ぬまでの全ては、大いなる祈りの時間。 そして祈りとは自身が在る事を祝福し、ゆえに他が在ることも祝福することと同じ。 生きることはそのまま、慈悲という大河の流れに乗ることなのだ…。