#月食みと月
ある夜のこと。鼻先に触れたものに驚き、月食みは目を覚ました。ひゅい、と疑問の響きを帯びて鳴き声をあげるけれど、常に比べて声は響かない。まるでどこかに吸い込まれているように。月食みは首を傾げながら、見知らぬ感触に向けて手を伸ばして触れると、すぐに崩れて消えた。体温を奪われる感覚に、月食みはぶるりと震える。その時、雲に隠れていた月が姿を表し、月食みを照らし出した。今宵の月は満月で、落ちてくる光はいつも以上に白く、またその姿は近くあるように思えて。月食みは驚かせたものの存在を忘れて空に手を伸ばし、ひゅうい、と鳴いた。焦がれるように。
about 2 months ago