この世に迷い込む者は、みな誰にも言えぬ業を抱えている。
白い布を被った顔のない男は、迷い人の女を静かに迎え、囁いた。
「ここは夢によって現実を塗り替える場所。このベッドで眠れ。悩みを晴らせば、現実も晴れる。だが、もし叶わねば二度と目覚めることはない」
女は叶わぬ恋を胸に、深い眠りに落ちた。
男は布の下で、誰にも見えぬ口角を吊り上げて呟く。
「所詮、夢ごときが現実に勝てる筈もないというのに」
ベッドの上で魘される女は、泣き叫びながら、毒々しく艶やかな果実を無数に実らせた一本の木へと変わっていく。
「これはこれは。余程甘ったるい願いだったらしい」
男は満足げに、愛する獣へ熟れた果実を投げ与えた。
4 days ago