十一時を過ぎた頃、突然携帯が鳴り出した。ディスプレイを見ると五の名前が表示されていた。他はどうか知らないが、彼は社用ではなく伊の個人用にかける。使い分けるのが面倒らしいのだ。
「はいはい、今出ますから」
追い立てるように鳴り続ける携帯に謝りながら電話を取った。用件は大したことのない質問で、翌日でもいいのになと思っていたら『で、本題なんだけど』と五は切り出した。改まった言い方に伊は身構える。
ーーまだ何かあるのかと思ったら、ただの雑談であった。
「はあ、はあ、そうですね、ええ、はあ、はい」
『オマエさっきからテキトーな返事しやがって聞いてんのかよ。帰ったらマジビンタね』
「ヒェッ、っはい、聞いて
14 days ago