飛行機雲を見ていた。
冬の、晴れた空に白い筋が一つ。白い翼が通っていった後だった。なんとなく手を伸ばしても、届くはずもない。ぐんぐん遠ざかっていく飛行機に、私の手が空を切る。私に空は飛べないのだ。
「お待たせしました」
そうやってぼんやりしていると、背後にあの人の声が聞こえた。
「や、今来たとこっす」
彼女の手を取って歩き出す。彼女の右手は、少しだけひんやりしていて、暖かい。
「楽しみですね」
「はい。私もっす」
この手を握れるなら、飛べなくてもいいかもな、なんて、私は青空を見上げて思ったのだった。
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