#光の小話
木々のざわめきに包まれた森の都、グリダニア。冒険者ギルドを兼ねるカーラインカフェ、木の温もりに満ちた空間と、香ばしい料理の香りが出迎えてくれる。カウンターの奥から、穏やかな眼差しをした女が声をかけてきた。
ミューヌ。ギルドの受付を担う女性である。
「ようこそ、カーラインカフェへ。……さて、キミのお名前を伺っても?」
問いかけに、大柄な女はしばし沈黙した。
頭の奥が深い霧に包まれたように、過去が何ひとつ思い出せない。
家族の顔も、旅の記憶も、戦場の轟音すら霞んでいた。
けれど。
鮮明に残っていたものがある。
炊き立ての白いご飯。
湯気を立てる味噌汁。
香り高いぬか漬け。
2 months ago