>> 神社の夏祭り
縁側では真夏のひかりを帯びた硝子が綺麗に笑い、八月の終わりを告げ始めた。風鈴を揺らす陽が暮れる。銀貨を三枚握り締めて僕は神社の階段を一段ずつ上がる。三段上がったら一段だけ降りる。繰り返すこと十三度、梔子の実で染めた浴衣を着た女の子が僕の名前を呼んだなら、夏の最後の夏祭りが始まりを告げるんだ。今年も会えた君は、大きくなったと僕に笑う。去年より一段高い階段の上から僕を撫でて、嬉しそうに帰っていく。夏さえ来なければ、君を失うことはなく、夏を迎えなければ君に会うことすらかなわない。一夜だけ遊べる彼方と此方の境界線の夏祭り。あと何回、膝を抱えたまま大きくなる僕は遊びに行けるだろうか。
21 days ago