「なぜきみはぼくにこんなにもやさしい? 誰もきみを愛さず、顧みず、誰もきみを見つけてやらなかったのに。なぜきみは当然のようにぼくを愛する? その方法を知っている?」
「わたしがまだ赤ん坊の頃……月のきれいな真夜中がいいわ。泣いているのにみんな眠っていて、でも泣く以外に何もできないでいるとき、あなたは夢を見ているの。夢の中であなたは赤ん坊の泣き声を聞いて、そちらに向かって走る。果たしてそこには赤ん坊がいて、あなたは乳もおしめも持たないけれど、そのてのひらで頭を撫でてやるの。せめてさみしくないように。その一夜の夢がわたしを生かして、あなたのところに還ってきたの。わたしはなんだかそんな気がするのよ」
2 months ago