「僕ぁ、大した力もないただの商人なんです。……でも、そうですね。今の僕は1人じゃない。あなたも知っての通り、仲間が多くいます。僕らに降りかかる露くらいは、払えるでしょうか」
優男の風貌で、穏やかな笑み。大した力もないと言った通り、強力な魔法も、全てを壊すほどの剛腕もないように見える。ただ、目の前に立っている。
それがこの上なく恐ろしい。仮にもこちらは複数で、武器も所持している。分かった上で平常を保っている、異常。この違和感を見逃すやつから死ぬ。
先ほどから地響きが鳴っている。早く、目の前の男を殺さなければ、取り返しのつかないことになる。
「…殺せ!」
「はは、遅かったですねえ。後ろです」
1 day ago