「責めないんですね」
「責めないよ」
乱雑に結われた髪がパサりと揺れ、メガネの奥の瞳は優しげな光を宿しえれんを見つめていた。
「納得なんて未だにできないけれど、あの当時えれんなりの答えがあの行為だった。私達は、――いいや、私は君の“助けて”に答えられない大人だった」
黒色の苦味しかないコーヒーを涼しい顔で啜って、はんじは遠い所を見ていた。
「君の選択肢を増やせなかったのは、まぁ悔しかったかな」
ふーふーとえれんは砂糖とミルクが溶けたコーヒーを冷ましながらはんじの言葉に耳を傾ける。
10 months ago